ご当地ずしの魅力
第7回 ぜいたくずし
第7回目は、「ぜいたくずし」をご紹介します。
すしはごちそうです。ですから余裕がある時には、思い切りぜいたくに作ればよいのです。
たとえば、ちらしずしや箱ずしを作るときなど、「いつもより具の数をよぶんに入れようか」とか、「いつもはアジを使うんだけど、今日はタイを奮発しちゃおうか」とか、思いませんか?
巻きずしも、ふだんは芯が細いのでがまんしていますが、特別なときには、「玉子焼きも入れてキュウリも入れて、焼いたアナゴも巻いて、いやいや、ここは一番、ウナギに変えてみましょうか」なんて、食べきれないほどの芯になったりして。
実際に食べるときはもちろん、材料を準備する段階、作る段階もまた、おしゃべりをしたり笑ったり。
おすしって楽しくさせてくれるんですよねぇ。
岡山県 ばらずし
江戸時代、ぜいたくを戒めるためにおかずの皿数を制限したことで生まれたそうですが、今では「日本一ぜいたくなちらしずし」といわれます。備前平野のお米と野菜に中国山地の山菜、瀬戸内海からはサワラやアナゴなどの海の幸をそろえて、具をふんだんにしました。岡山市制100年のイベントでは、100種類の具を乗せたばらずしを作ったとか。ぜひ見てみたいですが、とうていひとりでは食べきれませんよね。
香川県 カンカンずし
香川県でもさぬき市鴨部だけにあるというカンカンずし。大きな箱ずしを作り、枠に入れてクサビを締めます。そのとき木槌でカンカンカン! 「カンカンずし」の名はここからついたということです。具の魚はなんでもよく、アジやコノシロでも悪くないのですが、美味しいのは春のサワラでしょう。サバに似ていますが、サバよりも高級魚で、あんなに脂っぽくありません。間にはさんで2段にすると、より美味です。
佐賀県 須古ずし
佐賀県白石町須古地区に伝わるすしで、平たい浅箱にご飯と具を乗せ、木ヘラで起こすものです。いっぷう変わったすしに見えますが、江戸時代後期の文献には、「おこしずし」「すくいずし」の名で商品化されている、と紹介されていますから、けっこう歴史はあります。乗せる具は何でもいいのですが、写真の中列をご覧ください。黒っぽいのはムツゴロウです。かつてはよく食べられたものですが、今では貴重品です。
大分県 茶台ずし
大分県臼杵市の旧家に伝わる「ぜいたくな」すしです。写真を見ると「いかにも手作り」という大ぶりな握りずしですが、具はエビ、アジ、タコ、シイタケ、タケノコなど華やかです。でも、このすしがぜいたくといわれる原因はそこにあるのではありません。すしを裏返すと、なんと裏側にも具が貼ってあるのです。下に貼りついている具を、湯呑み茶碗を置く高台に見立てて「茶台」といいます。二度美味しいすしです。