ご当地ずしの魅力


第3回 発酵ずし
第3回目は、「発酵ずし」をご紹介します。
わが国のすしの歴史って古いんですよ。一説には紀元前3世紀とも5世紀ともいわれます。文献で明らかになっているのでも、8世紀にはあったことが証明されています。それ以前ですか? 日本に「文字」というものがなかったから、わからないのです。
その頃のすしは酢を使わず、発酵によって酸味を出していました。そして、ご飯は食べずに、発酵のために使うものでした。 もちろん、公家や貴族たちだけの食べ物です。これを「本当のナレズシ(ナレとは発酵のこと)」、ホンナレといいます。
それが室町時代になるとすしは庶民にも広がり、発酵を浅くして、ご飯もいっしょに食べてしまおうとする動きが出てきます。これがナマナレです。そんなすしが、今の日本にも残っているのです。
滋賀県 フナずし

よく、「日本で一番古い」といわれます。たしかに平安時代の延喜式にも載っているもので、ご飯を食べないとか、一度漬けあがれば、食べたいときにいつでも食べられるとか、古いすしの特徴を持っています。昔は貢納品、つまり税に使われたこともあったようです。今のフナずしの漬け方は昔どおりのやり方とはかぎりません。今の漬けかたは、江戸時代の終わり頃に成立したものといえましょう。
秋田県 ハタハタずし

ナマナレの一種で、糀や野菜を入れて発酵させる飯ずし(イズシ)の仲間です。昔は冬の産物・ハタハタをたくさん買って、正月用に作りました。ハタハタの肌の柄が富士山に似ているから「おめでたい」とされたんでしょうね。今もかわらず正月料理ですが、1匹ぐるみ漬ける「全(まる)ずし」、頭をとった「姿ずし」、切り身をつけた「切りずし」など、いろいろな種類があります。ブリコ(卵)を持ったすしは、とくに美味とされます。
石川県 カブラずし

糀や野菜を混ぜる飯ずしの中でも野菜の部分を多くしたすしが、石川県のカブラずしです。
魚はブリを使っており、これに似たものは富山県にもあります。お歳暮として江戸時代から用いられてきましたが、主に武士のもの。庶民はもっぱら大根ずし、つまりカブラの代わりにダイコン、ブリの代わりに身欠きニシンを使ったものでした。今ではカブラずしも庶民のすしとして愛されています。
福島県 ニシンずし

福島県の会津では、田植えのころに、身欠きニシンと米と糀とサンショウの葉でニシンずしが漬けられていました。
子どもが「おやつ?」といっても、親は田植えにいそがしくて手がまわらない。そこで「すしでも食べてなさい」と、このすしが出てくるわけです。なまでもいいですが、いろりであぶるとやわらかくなり、お年寄りでも食べられます。
