ご当地ずしの魅力
第6回 変革するすし
第6回目は、「変革するすし」をご紹介します。
いろいろ変化してきたすしです。すしの種類も、ホンナレやナマナレなどの発酵ずしもありますし、酢を使うすしは「早ずし」といいますが、これの中にも箱ずしや握りずし、巻きずしや稲荷ずしなど、たくさん生まれました。
ところが困ったもので、すしはひとつに決まっても、なかなかそのままではいてくれません。またすぐに形を変えてしまうものもあるのです。みなさんだって、そうじゃありません? よそで美味しいものをいただいたとき、その味を覚えておいて、自宅でそれを作ろうとします。でも、もっと美味しくしようと思って「アレンジ」する、なんてこと。おすしでも、そういうことがあるのです。今回は、原型から変わってしまったすしを紹介します。
青森県 イカずし
イカの足や内臓を細かく切り、胴の中に詰めて発酵させたものです。昔はご飯も一緒に入れたものでしたが、昔どおりに作っていると、だんだん売れ行きが悪くなり、ついには見向きもされなくなったとのこと。なんでも、若い人たちには、「ご飯が一緒だと、酸っぱくなりすぎちゃって」。「それじゃあ、一緒に入れるご飯をなくしちゃえ」。ってことでできたのがこのすし。もちろん、若い人にも人気があります。
山形県 塩引きずし
「塩引き」とは塩に漬けたサケのこと。これを具にしてすしを押し、型から抜き出しますから、地元・米沢では「ぶん抜きずし」とも呼ばれます。この塩引き。今は塩抜きして甘酸っぱく味がついていますが、昔は、塩なんか抜きません。とにかく塩からくて、水がほしくなります。もっとも、米も海の魚もぜいたく品だった昔のことです。わずかなおかずでご飯を大量に食べられますから、庶民の知恵だったのでしょう。
福井県 木っ葉ずし
すしを包むのはアブラギリの葉っぱ。包みを開くと、中は白いすし飯を握ったものに、マスの切り身が乗っています。これを何個も作り、まとめて箱で押すのですが、実はこれが「元祖、握りずし」。昔の握りずしはいったん握ったあと、葉っぱで包み、それを押し箱に入れて味をなじませるものでした。このようなすしは奈良の柿の葉ずし、石川の笹ずしなどに残っていますが、木っ葉ずしはめっきり見なくなりました。
鹿児島県 酒ずし
酢の代わりに「地酒」という甘い酒を用います。江戸時代半ばにはありましたが、昭和40年代には、自宅で作ることもなくなったようです。昔の文献を見ると1匹の姿ずしを作ったようですが、今日あるのは、ニンジンやシイタケ、コガヤキ(伊達巻き)やツケアゲ(薩摩揚げ)などを入れたちらしずしです。それでも地酒のアルコール度数は同じく高いですから、酔っ払いますよ。もちろん、車の運転などはご法度です。