ご当地ずしの魅力
第11回 駅弁のすし
最も古い駅弁の記録は、明治10年、大阪駅説と神戸駅説があります。
有名な宇都宮駅の白木屋(明治18年に販売開始)ではなかったんですね。
すしの駅弁というのは、それ以前の大阪駅や神戸駅の内容がわかっていませんので「最古」とはいえませんが、明治16年、高崎線の熊谷駅からでしょう。ホームに面したところに、「寿司パン雑貨」の看板を出したといいます。
それから2年後、東北線の小山駅で、「翁ずし」と名づけられた海苔巻きと玉子巻きと稲荷ずしの詰め合わせが売られました。
以後、すし駅弁は着実に数を増やし、明治末年にはローカル色豊かなものもそろい、今と同じく旅を楽しむ人々も出てきました。
第11回目は、駅弁で楽しむローカルずしです。
神奈川県 アジずし
明治36年、東海道線の国府津駅で、駅弁として売り始められました。当時は目の前の湘南で獲れる新鮮なアジを使った弁当がなかったために考案されたといいますが、今では押しも押されもしない相模湾沿岸の名物ですね。
握りずしでもアジはなまでなく、ちょうどよい加減に酢でしめてあります。なお、アジは年中獲れますが、旬の時期は秋なんです。ですから、できれば秋のアジのすしを食べてみてください。
岐阜県 朴葉ずし
岐阜県の山の中、高山駅で「三色ほうば寿司」という弁当が売られています。これは飛騨地方と東濃地方の郷土料理・ホオ葉ずしをモチーフにしたものですね。
駅弁の「三色」とは、タイとサケ、アナゴ、エビとマツタケのようですが、地元で古くから伝わるのは酢マスでしょう。このすしを軽く握って、ホオの葉っぱではさみます。なお、東濃のホオ葉ずしがすしご飯の上にマスを置きますが、飛騨では混ぜてしまいます。
富山県 マスずし
明治32年、富山駅では鉄道開通でにぎわっていましたが、弁当だけが決まっていませんでした。駅は地元の富山ホテルに懇願し、41年に駅弁営業を開始。その4年後に「ますのすし」が発売となりました。
マスのすしは地元ではよく知られていたのですが、当時、富山名物はアユずしとされ、これを商売モノにしようとは思いつかなかったのです。でも、この駅弁のおかげで全国区になり、今や富山の名物となりました。
奈良県 柿の葉ずし
和歌山線に吉野口という小さな駅があります。そこで売られている駅弁が柿の葉ずしです。もっとも柿の葉ずし自体が山里のものですから、大和平野に出れば、もっと有名なメーカーが立ち並んでいます。
昔は熊野灘で獲れたサバを塩漬けにして、山越えさせて作ったものですが、流通経路が発達した現代では、日本海の若狭湾、いや海外のノルウェー産でしょうか? そしてサバだけでなく、サーモンも人気となりました。