ご当地ずしの魅力
第4回 姿ずし
第4回目は、「姿ずし」をご紹介します。
魚を使ったおすしって、2とおりあるのをご存じですか。ひとつは、できあがりが一匹の魚の姿になるもの。「姿ずし」といい、アユずしやアジずし、小さなサバずしなどがこれに相当しますね。あ、大きなサバの姿ずしっていうのもあります。魚を目があっちゃうと、思わずギョッとなってしまいますけどね。
しかし、サケなんかだったらどうしましょう。姿ずしになんかしますか?また、シイラなんて大きい魚は、全身の姿なんか見たこともない。そこで切り身にし、細かくしてからすしに使います。こういうのを「切り身ずし」と呼んでいます。
この差は今に始まったようにも思えますが、実は、すしは酢を使わずに発酵させていた、奈良・平安時代からあったのです。
兵庫県 アユずし
日本海側の香住あたりのすしです。とはいえカニで有名な漁港の方ではなく、山沿いの方。秋までに獲った落ちアユを塩漬けし、その後、ひと月くらいご飯に漬けておくと、正月には立派な尾頭つきの魚として用いられるようになります。しかし、現在では作る人が激減。アユが減ったこともありますが、発酵ずしの特有なにおいを気にして、多くの人が食べなくなったのが原因なのです。
京都府 サバずし
「頭や尻尾も落としちゃって、どこが姿ずしだ」って怒る人もいるでしょうが、少し説明させてください。みんなで姿ずしを食べるとします。いちばん悲しい思いをするのはだれですか?頭の部分が当たっちゃった人です。発酵させるすしならともかく、酢で締めただけですから固くて、最後にゃ捨てちゃう。だったら最初から頭の部分は落としておこう。こうしてできたのがこのすしです。京都ではこれも「姿ずし」と呼んでいますよ。
徳島県 ボウゼずし
ボウゼって知っていますか? 標準語ではイボダイですが、関東ではエボダイとか関西ではウボゼとか、四国ではシズなどと呼ばれています。ほら、よく干物にされる魚ですね。徳島ではボウゼと呼ばれていまして、阿南海岸ではよく水揚げされます。徳島のおすしは変わっていまして、ふつうのすしではしない、かんきつ系の香りがします。ユズのしぼり汁がたくさん入ったユズ酢を使っており、上からは特産のスダチがかけてあるからです。
福岡県 カマスずし
カマスは白身のおいしい魚ですが、なぜかすしにする地方は少ないようですね。しかしここ福岡県では、南東部の久留米市の秋に欠かせないおすしがあるのです。高良神社でおこなわれる「くんち(=9日、つまり旧暦の9月9日)祭り」にあわせて作られるすしで、カマスは米を入れる叺(カマス)に通じる、豊作のお祝いでもあるのです。お詣りのあとはこのすしと酒で、客をもてなしたそうです。