ご当地ずしの魅力
第1回 握りずし
第1回目は、みなさんおなじみの「握りずし」をご紹介します。
おすしのスタンダードに思えるでしょうが、これ、おすしの歴史の中では、一番新しく仲間入りしたもの。
それでも、昔は今とはちょっと違っていたんですね。また、地方に行けば地方の握りずしもあるんです。
東京都 江戸前握りずし
江戸前とは江戸城の前、つまり東京湾のこと。近場で取れた魚介を使っている、という意味です。この写真のおすしはつけしょうゆはいりません。握りずしは冷蔵庫もない江戸末期に生まれたおすしです。魚が腐らないように、すしタネを塩や酢でしめたりしょうゆにつけたりしておりましたから、下味をつけていたのです。今は握りが小さくなりましたが、昔は大きなおにぎりのようなものだったといいます。
北海道 シシャモずし
今、私たちが食べているシシャモはカペリン。ノルウエーやカナダから輸入されており、別名「カラフトシシャモ」と呼ばれています。けっしてまずい魚というわけではないのですが、北海道、とくに胆振の鵡川(むかわ)流域では、毎年10月頃、カペリンではなくホンシシャモの水揚げが盛んになります。ですから、ホンシシャモの握りずしというのは、知る人ぞ知る鵡川の郷土の味。身はプックリとながら、軽い味わいです。
鳥取県 柿の葉ずし
山間部の郷土料理です。握ったご飯の上に酢でしめたマスの切り身とサンショウの葉っぱや実。これを柿の葉っぱに乗せます。おすしは売っている握りずしよりずっと大きいです。
これは座敷で食べるごちそうでもありましたが、仕事の合い間をぬって食べる「労働食」の意味もありました。おやつ代わりにおすしに手を伸ばし、食べ終わったら残った柿の葉を足もとに捨て、また仕事を続ける。とてもエコなのです。
高知県 田舎ずし
高知というと豪快な姿ずしで有名ですが、山の中で作られるのは自作自取りの山野菜のおすしです。とくに大みそかにはたくさんのおすしを作り、食べながら年を越すのです。タカナの巻きずしやコンニャクの稲荷ずし、アマゴやタケノコ、ナスの箱ずしなどが目につきますが、あまり見たことがないものばかりでしょう。握りずしではミョウガのおすしがありますよ。外側の固いところを酢につけると、あざやかな赤色に染まります。