ご当地ずしの魅力
第12回 新作のすし
わが国のすしは、わかっているだけでも千数百年、人によっては2000年以上もの歴史があるといわれています。
その間、すしはいろいろな変化を起こしてきました。
すしのすばらしいところは、新しいすしができても、それまでの古い形態のすしを残してきたことです。
だからこそ、古いすしが今の世に残り、古い時代のすしを食べることができるのです。
ただ、昨今のブームの中に、すしを狭い範囲に収めてしまおうとする動きがあります。「すしの王道は、大間のマグロの大トロだね」なんてね。でも、冗談じゃありません。すしはいつの時代にも「変化」し続けてきたのです。
これからも、新しいすしが生まれることでしょう。
すしの未来は、洋々としています。
群馬県 ニジマスずし
北関東は、伝統的なすしが乏しい地方です。だいたい、土地が関東ローム層という火山灰の台地。お米なんか取れるはずがありません。でも、今は技術も進歩して米も取れ、新しいローカルずしも誕生しています。写真は、群馬県で品種改良されたニジマス・「ギンヒカリ」のすしです。ニジマスは食べる餌によって、赤身になったり白身になったり。ただ、赤白どちらかは、開いて見ないとわからないそうです。
茨城県 納豆巻き
納豆といえば水戸納豆。これが全国的なブランドとなるのは明治時代のことです。水戸納豆の特徴は小粒なこと。大粒主流のときにあって、水害に強く、台風前に収穫できることで、広く認められたのです。納豆巻きの発祥は昭和30年代後半の岩手県だといいますが、納豆の発生は平安時代の水戸だという説もあり、地元の味として守っていこうとしています。県花が梅であることから、梅干し入りの納豆巻きも人気とか。
千葉県 飾り巻きずし
明治時代、祭りがあるとおじいさんがやって来て、巻きずしを巻いてくれました。巻きずしのプロですね。太くて、簡単な柄が入ったものを、いとも簡単に巻いたそうですよ。でも、そういう人は少なくなり、戦後は一般の主婦が、祭りのすしを巻くようになりました。その頃から中の柄はだんだん複雑化し、今やクロウトはだし。新作のすしは年末にコンクールがあり、優れたものは本に出て、みんなに紹介されます。
沖縄県 海ぶどうのすし
沖縄県はすしの伝統がない県です。サンゴ礁の土壌で、米の文化は育たなかったからです。でも、本土からすしの文化が入って来て、今はめずらしい魚介類の握りずしと軍艦巻きの宝庫です。魚市場へ行けば色鮮やかな魚が並び、2階ではそれをさばいて食べさせてくれます。もちろん、すしも握ってもらえますよ。写真は沖縄本島や宮古島に生えている、海藻の海ぶどう。口に入れた時のプチプチ感がたまりません。