Interview

「生活者の笑顔」を育む
おいしさと健康の一致

㈱Mizkan
MD本部 開発技術部長

NARUMI MICHIHIRO

※部署名・役職・内容は取材当時のものです

新しいおいしさで変えていく社会

ミツカンの商品開発が果たしていく責任、そして提供する価値は、「おいしさと健康」+「価格」を一致させ、「生活者の笑顔」を生み育てること。そして、この笑顔は、「買う身」「使う身」「食べる身」の全てにおいて育まれるものにしていきたいと考えています。

ミツカンにはもともと、相手の身になって考える精神を表す「買う身になって まごころこめて よい品を」という企業理念があります。そこにはもちろん、生活者の使う身や食べる身をも含めた思いがあり、2018年の『ミツカン未来ビジョン宣言』で、その姿勢をより明確に打ち出しました。

商品のデザインやパッケージに記載する言葉、価格、容量、賞味期限など、買うときのわかりやすさ、安心は当然のこと、使っていただくときには、調理のしやすさとともに「困った時のミツカン商品!」として献立作りの手助けになることなども意識して、「いつも生活者に寄り添える存在」を目指しています。そしてもちろん、食べていただくには、やはりおいしいのが一番。単に美味(びみ)というのではなく、食材が持つ「おいしさ」や「栄養」を引き出し、食べ飽きない味、素材の味が活かされたおいしさなど、新しいおいしさに次々と挑戦しています。

「やがて、いのちに変わるもの。」を提供し続ける、熱い思いと確固たる意思

「クリーンラベル」への挑戦は、そのひとつです。グループビジョンスローガンの「やがて、いのちに変わるもの。」のもと、『未来ビジョン宣言』で掲げた「新しいおいしさで変えていく社会」の実現のために、「生活者にとって、誰もがわかる原材料を表記する」「生活者が、摂りたくないモノは使わない、減らしたいモノを極力使わない」という、ミツカンの考えるクリーンラベルを定め、新商品はもちろん、伝統を守る既存の商品に関しても取り組んでいます。

おいしさのために健康を損なわない、健康のためにおいしさを犠牲にしない――「おいしさと健康を限りなく一致させる」。ミツカンが考えるクリーンラベルは、「おいしさ」と「健康」の両方を目指します。

おいしさについては、2014年に設置した「味確認室」を活用し、ミツカン独自の「味決定プロセス」を設定しています。味確認室とは、ミツカンが誇る〝味覚のプロ集団〟です。一流料理人に学び、おいしさの本質を解明し理解を深めます。その知識と経験をもとに、「味言葉の翻訳家」として開発部門と一流料理人をつなぐ役割を担っています。ミツカンの商品開発は、そうした味確認室のサポートのもと目標品質(最上級)をつくり上げた上で、工業化できる品質づくりを行っています。一見、遠回りにみえるプロセスですが、これを行うことで、ミツカンの味づくりの質は格段に向上しました。一方で、感覚的な要素だけではなく、おいしさのカギとなる要素を分析技術や評価スキルなどから客観的に捉えることで、本物のおいしさの実現にも取り組んでいます。

おいしさと健康の一致においては、例えばこれまでも、生活者の「お酢や納豆を健康のために摂りたい」という思いを、その「すっぱさ」や「におい」が妨げてしまうことのないように、発酵醸造技術による改良や味づくりの工夫を行い、生活者がより自然に健康的な食を手に取れるチャレンジを続けてきました。

また、野菜をたくさん摂れることへの関心も高い「鍋メニュー」では、どんな食材を入れても、あるいは薄まっても、おいしく食べられる「鍋つゆ」の味づくりにおける「味覚曲線」の黄金波形を見つけ、ノウハウとして活用しています。

ワクワクは、未来をつかむ感度となる

「失敗は成功の母」――もう言い尽くされた言葉ですが、私は、ミツカンの商品開発は、やはりこの言葉とともに常にあるべきだと考えています。知見は、挑戦し失敗した中にこそあるからです。その時、成功には導けなくとも、その中で得た知見は、次に別の技術が見つかったときにそれと合わせて、それまで不可能だと考えられていたような壁も乗り越えられる大きな力になります。

大切なのは、失敗した中にもそういった知見がないかを探そうとする意識や意欲。実は、納豆容器の革命とも評価いただいている「パキッ!とたれ」や「押すだけプシュッ!と」も、失敗の連続から知見をつかんでいき、容器メーカー様とともに最新技術を生み出したことで実現をみたものです。

未来をつかむ知見を得るには、これまでの延長のようなやり方や常識は捨て、ワクワクしながらブレークスルーしていくチャレンジ精神と行動力が必要です。ワクワクは、自己完結にとどまらず、魅力的な人やノウハウをも引き寄せます。ミツカンは、そんな人たちとともに取り組みの輪を広げながら、社会や生活者に寄り添った商品開発をこれからも進めていきたいと考えています。