簡単・便利、そして楽しさを追求した容器の革新
「パキッ!とたれ」

「パキッ!とたれ」で、納豆から楽しさもお届けしたい。

お客様の不満をさらに解消するために

「たれ小袋が開けづらく、食卓や服を汚すことがある」というお客様の不満を解消するために、2008年にたれをゼリー化して、たれ小袋とフィルムをなくした「金のつぶ あらっ便利!」を発売しました。当初、この容器改革はお客様の注目を集め好評をいただきましたが、一方で「ゼリー状のたれが溶けづらい」、「納豆が入っているスペースが(従来品に比べ)狭いので、混ぜにくい」という声も寄せられました。この新たな問題点を解消するために開発されたのが、「金のつぶ パキッ!とたれ」です。ただ、この商品開発までの道のりには様々な課題がありました。

金のつぶ あらっ便利!

利便性の追求だけではない容器改革

「パキッ!とたれ」の開発は、2010年7月よりスタートしましたが、この開発には大きく3つの課題がありました。

1つ目は「納豆とたれを混ぜやすく」という点です。アイデア会議の中で、“混ぜやすくする”→“ジェル状のたれから液体のたれへ”→“小袋ではなくより使いやすい工夫を”、との考えから、ふたの上部に液体のたれを入れ、フィルムを貼り、ふたを割ると液体のたれが出てくるという発想が生まれました。しかし、「液体を入れた発砲スチロールにフィルムを貼るのは極めて困難」な課題でした。その理由としては、フィルムを貼るには熱で溶かす必要がありましたが、高温では発砲スチロールそのものが溶けてしまい、穴を開けてしまうからです。また、柔らかくてへこむため、圧力を加えてもフィルムがピッタリと付きにくいという難点もありました。そこで溶着性と強度の両立のため、低温で溶けるフィルムと高強度フィルムで挟んだ多層構造にすることで、溶着しやすく、かつ買い物かごの中で他の物に当たっても破れにくい強度を確保しました。また、ふたにたれを封入したことで、納豆を混ぜるスペースができ、混ぜやすい容器が完成しました。

容器を上から写した写真

2つ目は納豆が乾燥しないようコントロールすることです。納豆は菌が生きているため、完全に密封してしまうと発酵が進みません。一方で、空気に触れすぎると乾燥を早めてしまいます。従来の納豆商品で納豆を覆うフィルムがあるのも、こうした乾燥を防ぐためでした。「パキッ!とたれ」では、ふたの中心をへこますことで ふたを割りやすくするとともに乾燥防止の役目も果たしています。このような形状を取ることでフィルム無しでも容器内の乾燥を最適にコントロールすることが可能となりました。

容器断面図

3つ目は「楽しさ」という点です。これは「パキッ!とたれ」の開発において最も重視した点になります。ふたを割ったときの「パキッ!」という音や手ごたえが楽しさをもたらします。容器開発において、特にお子様が喜ぶような「パキッ!」という音や感触を重視しました。 ただ、簡単に割れることと生産性の両立は難航しました。試作容器はまず、樹脂型を作り、その後、金型を作って、製造ラインと同じ条件でテスト製造を実施しました。試作ではうまくいっても、実際の製造ラインに乗らないのでは製品化はできません。その過程で、制作した試作品は(図面制作のみを含めると)数十万個にもなりました。通常の納豆商品の開発にかかる期間は6ヶ月程度ですが、「パキッ!とたれ」は18ヶ月という長い時間をかけました。そして、、、“作っては割って確かめて”の試行錯誤の繰り返しから、「割るのが楽しい」容器が完成したのです。

納豆から食卓に楽しさを

開発期間は18ヶ月、総勢200人強が関わったプロジェクトの末、「金のつぶ パキッ!とたれ とろっ豆」は2012年1月に発売となりました。簡単・便利という利便性に加え、ふたを割る「楽しさ(体験)」というコンセプトを形にしたこの商品は、発売からの約1年間で2億食を突破する大ヒットとなりました。また、お子様だけでなくご年配の方からも「簡単で食べやすいからうれしい」などの好評をいただいています。

お客様の声に耳を傾け、毎日の暮らしに役立つ商品を開発すること。また、「こんな商品を使ってもらえたら、もっとお客様に喜んでいただけないだろうか」という想いをかたちにすること。「パキッ!とたれ」は、そうしたミツカンの企業姿勢の原点から生まれた商品です。

研究開発を振り返って

「あらっ便利!」をさらに進化させよう、という意気込みで取り組み始めたテーマでしたが、実現に向けては、「本当に実現可能なのか」と思う場面もたびたびでした。社内外の多くの方々にご協力いただきながら課題を克服していき、ようやく発売にこぎつけた時の喜びは格別でした。
今後、新たに「楽しく」という要素も加わった「パキッ!とたれ」の「パキッ!」という音を合図にお客様の食卓にささやかな楽しさが広がればさらに嬉しく思います。
MD本部 開発技術部 苅込 卓也

※部署名・役職・内容は掲載当時のものです