Interview

生活者とミツカンの距離をどんどん近づけていくために

(株)Mizkan Holdings執行役員
日本+アジア事業 CRM本部長

HAYASHI TARO

※部署名・役職・内容は取材当時のものです

時間軸と体験軸でつながりたい

ミツカンの新しい部門として、2021年7月に誕生したCRM本部。CRM(Customer Relationship Management)にもさまざまな定義があるようですが、ミツカンのCRM本部が目指すのは、一言でいうと、「ミツカンと生活者の持続的で直接的な接点」をわかりやすくつくっていくことです。これまでも、お客様相談センターや公式ウェブサイト、SNS(LINE、Instagram、Twitterなど)、MIZKAN MUSEUM(ミツカンミュージアム)などを通じ、生活者との直接的な接点づくりには務めてきましたが、デジタルの力を借りながら、それを一気に、そして統合的に進化させる取り組みを始めています。

ポイントは2つ。一つは時間軸で。ミツカンはモノをつくって売るメーカーではありますが、生活者にモノを買っていただくのが企業としての最終地点ではありません。そこはいわば、出発点。売り切り型のビジネスによる「一期一会」の関係から、「持続的」な関係の構築へとシフトし、時間軸が長く続く信頼関係を築いていくことこそ大切だと考えています。

もう一つは、体験を軸に。商品を介しての体験はもちろん、商品を介さない体験においても、ミツカンは生活者との接点づくりに力を注ぎたい。例えばMIZKAN MUSEUMは、ミツカンの酢づくりの歴史や、食文化の魅力にふれ、楽しみ学べる体験型博物館です。そこでの体験を、ミツカンを好きになってもらう一つのきっかけにするとともに、その後、生活者とミツカンが信頼し合う「友だち」のような関係としてつながる出発点にもしていきたいのです。

いずれのポイントにおいても、デジタル機能の強化・応用による新しい仕組みの構築と付加価値づくりが重要だと考えています。

企業と消費者の関係から、お互いに寄り添える関係へ

『ミツカン未来ビジョン宣言』において、ミツカンは生活者とともに価値を創造していくことを宣言していますが、CRM本部では、その実現に向け、企業と消費者という関係ではなく、生活者とのエンゲージメント(※1)を強化していくことで、生活者一人ひとりの声にもっと耳を傾けられる等身大の関係を目指す取り組みを進めています。

例えば、「おいしさと健康の一致」にまじめに取り組み、その熱い思いを真正面から一方的に語られても、聞き手は困ってしまうかもしれません。これまでのミツカンは、生活者からみて等身大で身近な関係にはなりにくかったように思います。

これからのミツカンは、「交流」ができる生活者との双方向の接点をどんどんつくっていきます。公式ウェブサイトや公式SNSを通じて、商品情報や企業情報など、知りたい情報を正確にわかりやすく、またタイムリーに伝えていくだけでなく、またお客様相談センターで生活者の声を待ち受けるだけでなく、生活者とミツカンが意見を言い合える、会話をし合える環境を積極的につくっていきます。時には、お客様相談センターが、放送局のサテライトスタジオのように、街に出没するかもしれません(笑)。

(※1)企業や商品などと生活者との間における相互の信頼関係

共創の関係とコミュニティづくりに向けて

信頼関係の構築においては、単なる双方向性ではなく、その先にともに価値を生み出す姿勢が大切だと考えます。

既にそのきっかけづくりとなっているのは、2020年秋からスタートさせた「Mizkanメニューサポーター」です。公式ウェブサイトなどを通じ、ミツカンに協力したいと手を挙げていただいた生活者の方が、現在、約1000人。サポーターの皆さんと継続的な対話をする中で、実にさまざまな意見をいただき、ミツカンが考案したメニューを実際につくってもらい評価していただいたりもしています。いわばこれは、「友だちの関係」ができあがっている一つの事例です。まだ始まったばかりですが、メニューの枠に限らず、今後この取り組みをさらに発展させていく構想です。

また、SNSの場も、だんだんと双方向になってきています。例えば、生活者によって考案され、SNSで発信されたミツカン商品のメニューを、ミツカンの公式アカウントで紹介するなど、フォロワーの皆様にも身近に感じて頂けるアカウントを目指しています。これらの活動により、既にエンゲージメント率では、業界でも高水準となっています。

今後は、さらに生活者と仲良くしていくために、さまざまな接点にデジタル機能の強化・応用を進め、より新しい付加価値を加えていきます。公式ウェブサイトやSNS、お客様相談センターではもっと双方向で交流型の企画や機能を増やすことで、もっと意見交換できる場にしたり、MIZKAN MUSEUMや工場などのリアルな接点においても、デジタルとの融合による新たな体験機会を創出していきたいと考えています。デジタルにおいてもリアルにおいても、全く新しい生活者との交流の場を拡大していく構想です。

これまでの商品単位でのお付き合いから、これからはトータルで「ミツカン」とお付き合いいただく関係へ。しかも、ミツカンとの1対1の関係でエンゲージメントを強めていく、そんな仕組みをつくっていきます。

10年先を見据えた生活者との関係づくり

私は、『ミツカン未来ビジョン宣言』を、今、ミツカンがお付き合いしている生活者はもちろん、今から10年後にお付き合いしている人たち、つまりは若者や子どもたちの心にも届くように活動をしていくことも、とても大切なことだと考えています。価値観がどんどん多様化していくなか、時代を経て、今の若者や子どもの未来にもちゃんと応えていく。

そのためには、短期的な売上だけを重んじるのではなく、生活者一人ひとりに理解していただいた上での最適なお付き合いと、持続的な関係維持を可能にするデジタル面での機能強化が必要です。「ミツカンは信頼できるから、私の情報をミツカンに預けます」という関係になれるかどうか。そして、その方に継続的に、そして最適な情報や体験をお届けできるかどうか。10年後も見据えて信頼し合える友だち関係を築けたら、きっとそれは可能になり、デジタルの進化とともに、さらに生活者とミツカンが双方の成長に貢献しあう関係になっていけると思っています。