だしを表現するための評価用語を
フレーバーホイールに体系化

だしへのこだわりをより追求し、
お客様に満足していただける味・香りを提案し続けたい

だしを評価する共通言語を

ミツカンには、つゆやたれなど、魚の節や煮干し類のだし(出汁)を使用した商品が数多くあります。だしは商品の味わいや風味を決める大切な存在であり、だし感の強い商品がお客様に好まれやすいという傾向もあります。

しかし、「だし感」と一言で言っても、そこには鼻で感じる“香り”も、舌で感じる“風味”も含まれ、意味するところは非常に広く曖昧です。商品開発のうえでも、だし感の評価は研究者や開発者によって判断が異なる部分があり、共通の基準が定められていない状況でした。

だしの香りや風味を表現する言葉を整理し、評価用語を体系化すれば、お客様の嗜好が何を基準に判断されているのか、科学的に解明できるのではないか。また、その評価用語を社内での共通言語とすることで、商品開発におけるブレが少なくなり、よりお客様のご要望に応えられるのではないか。そうした考えから作成されたのが、だしの「フレーバーホイール」でした。

評価用語の収集からスタート

作成作業にあたっては、まず、これまでだしを評価する際に使用していた用語を細分化。さらに、社内の商品開発者や研究者などにより、だしの香りや風味について官能評価を行い、その感覚を表現する言葉をフリーワードでリストアップすることで、だし評価のための用語、約250語を収集しました。
次のステップは、収集した用語を整理し、体系化すること。抽象的な言葉を削除し、類似する言葉はグループ分けをするなど、用語の一つひとつを精査しながら絞り込みを行いました。こうして集約された評価用語は40語。さらに、これらを覚えやすいように丸く配置することで、2008年、業界で初めて、だしのフレーバーホイールが完成したのです。

だしへのこだわりをさらに追求

だしのフレーバーホイールには、香りと風味を表す用語が「肉質」「くん煙臭」「経時変化」などのカテゴリーに分類され、整然と並んでいます。「マツタケ様」や「バニラ様」など、だしとは一見無関係に思える用語も含まれていますが、これらもすべてだしを評価するために欠かせない要素。現在ミツカンでは、40語の用語すべてのイメージなどを正確に判断できる専門のパネリストを育成し、フレーバーホイールをだしの官能評価に使用しています。それによって、原材料や抽出方法の違いなどがどう品質に影響するのかを具体的に解明することができ、お客様の求めるだし感に近づけていくことができるのです。
ミツカンならではのだしへのこだわりをより追求し、お客様に満足していただける味・香りを提案し続けたい。そのために生まれた客観的、かつ合理的なツールが、だしのフレーバーホイールなのです。

研究開発を振り返って

だし感という曖昧な概念に関する共通言語を持つことで、つゆなどの商品開発のスピードアップを図れたことは、非常に有意義であったと思います。今後は料理研究家の方などプロの方々にご意見を伺い、評価用語が我々のひとりよがりの言葉になっていないかを検証し、ブラッシュアップしていきたいですね。
中央研究所 チームリーダー 伴 正保

※部署名・役職・内容は掲載当時のものです