ごはんに近いやわらかさ
新食感の納豆「とろっ豆」を開発

お客様の嗜好から乖離することのないよう、ご意見に耳を傾けていきます

これまでにない食感の納豆を求めて

日本の国民食ともいえる納豆。ミツカンが本格的に納豆事業に参入したのは、1997年のことです。翌98年、新ブランド「金のつぶ」シリーズが誕生。以来ミツカンは、さまざまな商品の研究開発に努めてきました。

しかし、味の面であればたれによって変化がつけられますが、納豆の基本品質そのものを変えることは困難です。はっきりとした特色を持ちつつ、納豆の本質から逸脱しない商品を模索するうち研究開発スタッフが辿りついた結論は、「食感」でした。実は、ミツカンが研究を続けている多種多様な納豆菌の中に、豆がやわらかな納豆を作り出す菌があったのです。この菌を使えば、かつてない食感の納豆が生まれるかもしれない。そこから、「やわらかい納豆」の研究開発がスタートしました。

※商品の仕様は地域により異なります

菌の安定供給が大きな課題に

納豆の原料となる大豆は、発酵が進むにつれ、次第にやわらかくなります。しかし、一定時間を過ぎると、納豆に含まれる水分が糸の「ねばねば」に吸い取られ、豆は堅くなっていきます。今回使用された納豆菌は、他の納豆菌に比べてねばねばが控えめという特徴があり、そのために大豆から吸い取られる水分が抑えられ、やわらかい納豆ができあがると考えられました。

ただし、納豆菌は非常に菌性質が不安定。工場での生産に対応できるだけの菌を培養していくと、豆が硬くなる菌に変化したり、糸をほとんど引かないような菌が突然生まれてしまうこともあります。研究員は菌の培養方法を何ヶ月も研究し、ようやく菌の安定供給を実現しました。

また、工場への導入においても、さまざまな課題がありました。苦労したのは、やわらかさの基準を決定すること。感覚的な部分でもあるため共有が難しく、最終的にはプレス機械による抵抗値の測定で判断する方法を採用し、この課題をクリアしました。

市場調査結果を覆す商品力

こうして2007年に発売となったのが「金のつぶ 超やわらか納豆とろっ豆」です。「とろっ豆」はその名のとおりとろけるような食感が特徴で、水分量はごはんとほぼ同じ。「ごはんとの相性が抜群」とお客様からの好評を得、発売開始から6カ月で1億7000万食を超える大ヒット商品となりました。

実は、これまでの市場調査から、「やわらかすぎる納豆は嗜好が落ちる」という結果が報告されていました。「とろっ豆」は、その調査結果を商品力によって覆すこととなったのです。既成概念にとらわれず、常に新しい発想にチャレンジしていくこと。研究員はじめ開発スタッフは、その思いを新たに、次の商品へと向かっています。

研究開発を振り返って

納豆菌の個性は千差万別。常に研究をし、ライブラリーを守り続けているからこそ、「とろっ豆」のように新たな脚光を浴びる菌が生まれたりします。特徴ある菌を商品開発に活かせるよう研究を続けるとともに、お客様の嗜好から乖離することのないよう、ご意見に耳を傾けていきます。
中央研究所 主席 竹村 浩

※部署名・役職・内容は掲載当時のものです