塩味と酸味のいい関係 食酢の減塩効果

塩味と酸味のいい関係を、より多くの方たちに知っていただきたい

40年前から食酢の減塩効果に注目

食塩の過剰摂取は健康面のリスクが高まると言われています。そんななか、ミツカンは40年も前から、食酢の「減塩効果」に注目。1973年には、お酢を使うと、塩分を減らしても防腐性を保持したまま味覚上はほどよくなるという特性をいかし、"減塩増酸"のキャンペーンを開始。サワー漬けをPRするなど、さまざまな取り組みを続けています。

2006年、ミツカンと和洋女子大学・畑江敬子教授は、この食酢の減塩効果について共同研究を開始。食酢の添加が食塩の閾値へ及ぼす影響などについて、実際に官能評価試験を行い、2009年に学術論文を発表しました。

減塩① 隠し味程度の酸味で塩味を増強して減塩する

味覚における閾値とは、味を感じさせるために必要な最小値を指します。今回の共同研究では、20歳代の女子大生37人をパネラーとし、食塩の水溶液に食酢を添加した場合、その閾値がどう変化するかを調査。蒸留水と比較する二点識別法を採用し、何らかの味が感じられた濃度を「検知閾値」、塩味として感じられた濃度を「認知閾値」として測定しました。

その結果、「検知閾値」についても「認知閾値」についても、食酢の添加によって有意に低下することが判明。ごくわずかな酸味を加えると、塩味は実際よりも強く感じるという結果となりました。添加した酸味は、パネラー各人の検知閾値の1/2。酸味はそれだけでは感知できないほどの微量であっても、効果を有することがわかったのです。

次に、だし液やミックス野菜スープなどにおいて、わずかな酸味を利用した減塩効果の官能評価試験を実施。こちらの試験でも、酸度0.01%(カップ1杯に10滴程度)という隠し味程度の食酢を添加することで、塩味増強による減塩効果が確認できました。

減塩② 適度な酸味で塩味の物足りなさを補い、減塩する

次に、おいしさを邪魔しない適度な酸味についても、同様にだし液やミックス野菜スープで試験を行いました。食塩濃度を変えながら(例えば食塩濃度0.6%と0.8%)、それぞれに酸度0.135%(カップ1杯に小さじ1程度)の食酢を添加して官能評価を行ったところ、食酢を添加しない場合には明確に識別できる食塩濃度の差が識別できなくなり、嗜好(味を好ましく感じること)においても有意差が見られなくなることが分かりました。

これは、カップ1杯に小さじ1程度の食酢の添加で塩味の強さが識別されにくくなり、塩味の物足りなさを酸味が補っておいしく食べられるという減塩効果であると考えられました。
ものごとの具合や加減を意味する「塩梅」とは、そもそも塩味(塩)と酸味(梅酢)の関係を表した言葉。ミツカンは、調味の要でもある塩味と酸味のいい関係を、これからも研究し続けていきます。

研究開発を振り返って

食酢の減塩効果は一般にも言われてきましたが、今回の共同研究によって学術論文情報として蓄積できたことは、非常に有意義でした。これらの成果をこれからの商品開発やメニュー開発につなげていきたいと考えています。

中央研究所 小笠原 靖

※部署名・役職・内容は掲載当時のものです