Interview

付加価値をもたらすイノベーションをパートナーとともに

㈱Mizkan Holdings 執行役員
日本+アジア事業 仕入統括部長

NISHI YUUJI

※部署名・役職・内容は取材当時のものです

「開発購買」への進化と「幅広い調達」を果たす

調達に求められる何よりの基本は、「Q・C・D」(品質・コスト・納期)の面で信頼性高くかつ安定的な原材料調達を行うこと。ミツカンではこのことに、商品を世に送り出すのと同じ熱意を持ち、取り組んでいます。

もう少し具体的にいうと、「Q」とは、おいしさの品質を実現し、かつフードセーフティ(食品安全)の面でトラブルがないものを調達すること。「C」は、適切な価格で購入すること。「D」は、必要な量を必要な時に安定的に工場に運べることです。

近年はさらに「開発購買」に力を注いでいます。仕入先様とともに、お互いの企業のビジョンとその接点を確認。ともに成長できるような取り組み課題を設定し、仕入先様とミツカンでワークショップを行い、共創での商品開発に取り組んでいます。

語り合い、成長し合い、価値を分かち合う

「パートナーとともに成長していく」という視点は、ミツカンの調達が掲げる一番のポリシーです。ビジネスパートナーである仕入先様を、商品を購入していただく生活者と同じように大切にし、ともに成長し合える関係でなければ、ミツカンの成長はありません。

生活者視点に立ち、目指すべきところは明確に示し、交渉すべきところはしっかりと交渉する。それは「三現(現地・現物・現実)」を特に大切にする行動指針にも表れています。新規仕入先様とのお取引に際しては、原則的に現地での工場調査確認を実施しており、野菜類においては圃場(ほじょう)※1調査も行っています。また、納豆用の輸入大豆においては、毎年現地仕入先様を訪問し、商品となった納豆の出来栄え品質や、工場での生産性、大豆の購入単価を総合的にフィードバックし、それらをもとにした次期シーズンの数量・価格交渉を膝詰めで実施しています。

苦労も、喜びも、メリットも、切磋琢磨も、「常にパートナー様とともに」という姿勢を持つ。その中で、「ミツカンは厳しいことも言うけれど、良い気づきを与えてくれるいい会社だよな」と思っていただける関係性を築くこと、いわば仕入先様にも「ミツカンファン」になっていただくことが、実は調達が何よりも取り組まなければいけない最大の業務だと思います。

そのためには、単にモノの調達にとどまらず、さまざまな「情報調達」も仕入部門が担う大切な役割だと考えています。より広く社会に、世界に、感度の高いアンテナを張り巡らし、「未来を見つめた環境認識」の情報を得たり、引き出したりすることにも、常に意識を働かせて取り組んでいます。

(※1)農作物を栽培するための場所

サステナブルな調達を

そして今、『ミツカン未来ビジョン宣言』のもと、生産物流が特に果敢に取り組んでいるのは「見える化」への挑戦です。そのままでは目に見えないものを形にして見えるようにすることを可視化といいますが、見える化は、可視化した情報やデータを組織の壁を超えて場所や時間を問わずつなげていき、具体的な行動に結びつけていくこと。

もともとミツカンは、お酒づくりから生じた酒粕を原料にお酢をつくることから事業がスタート。しかも、単に副産物の活用ではなく、それを「価値あるものに変えた」ことが原点です。つまり、ミツカンの歴史そのものにサステナビリティの精神が息づいているわけですが、『ミツカン未来ビジョン宣言』のもと、それをもっと明確に打ち出し、具体的に進めるために、ミツカンの仕入部門が音頭を取り、他の調味料メーカーにも参加を働きかけた画期的な取り組みをスタートさせています。

サステナブルへの一つの課題は、生活者に納得いただける商品価格と、サステナブルな容器開発・使用にかかるコストとの折り合いをどうつけるか。例えば、環境に配慮された素材を商品のパッケージに使う場合、コストの面で導入の壁がどうしても立ちはだかります。そこで、サステナブルな方向へ、1社ではなく調味料業界全体で大きなうねりをつくろうと考えたのです。

具体的には、市場ではすでに実践されているものの、調味料ではまだ一歩を踏み出せていなかった環境配慮素材を使用した容器の導入。調味料は、油が入っていたり、充填温度も高いため、非常に過酷な条件をクリアできる容器が求められます。そこで、2019年秋から、いくつかの調味料メーカーと合同で過酷な条件下における安全検証を行い、検証データをもとに論文を作成。調味料業界全体で、持続可能な事業を進めていける大きな一歩を踏み出しています。

ミツカンでは、『ミツカン未来ビジョン宣言』をもとに、「仕入発のイノベーション」にも期待を寄せていただけるよう、これからもチャレンジを進めていきます。