商品開発ストーリー

2020年に1億本突破!
大ヒット商品「カンタン酢」の開発秘話に迫る

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株式会社Mizkan(以下ミツカン)は企業理念である「買う身になって まごころこめて よい品を」に基づき、商品やメニューを通じて、お客様へ「おいしさと健康」を提供していきたいと考え、調味料を中心にお酢ドリンクや納豆など様々な商品を発売しております。

今回はミツカンを代表する商品の一つである、「カンタン酢」。「お酢」はミツカンが創業から携わってきた代表的な商品です。食文化の変化と共に、お酢もまた形を変え、お酢を使った新しいメニューの開発と共に、ミツカンは商品を提案してきました。「カンタン酢」は2021年現在、数々のお酢商品の中で売上No.1の商品です。名前の通り、カンタンにお酢料理ができることがお客様から支持され、発売から9年でミツカンお酢商品のNo.1となり、現在もその人気を維持しております。「カンタン酢」の誕生のきっかけや開発背景、今後の展望について現商品開発担当自らが語ります。

梶原洋平 株式会社Mizkan 商品企画部

商品企画歴17年。お酢を中心に、家庭用商品から外食用・中食用商品、加工メーカー用の商品まで幅広く担当してきた。また、新規カテゴリーの立ち上げも手掛けてきた。2018年にカンタン酢のブランドマネージャーに就任。カンタン酢を今まで以上に愛される商品に育てることを使命に、社内外のカンタン酢ファンの声を聞くことにこだわっている。

序章

食酢市場は健康需要の拡大や内食の増加に伴い、この5年間(2016-2020年)で109.7%と右肩上がりで成長しております。中でも、穀物酢や米酢などの生酢に、砂糖・食塩などがあらかじめ入って味付けされた調味酢は、自分で合わせ酢を作る手間が省けるため、手軽に使える調味料として2009年頃から売上を伸ばしてきました。さらに、働く女性が増加し、調理に時短や簡便さが今まで以上に求められるようになったこともあり、2017年には食酢市場で生酢を上回る市場規模となりました。


ミツカンの調味酢の主軸商品となる「カンタン酢」は、味のバランスがよく、様々なメニューに活用できる使い勝手の良さがご好評をいただいております。今や看板商品となった「カンタン酢」ですが、発売当初は知名度が低く、ひっそりと売れていた商品でした。常にお客様のニーズを捉え、様々な工夫をしてきたからこそ、ここまでの成長を遂げることができたと考えております。


「カンタン酢」の開発背景

「カンタン酢」は2008年に「カンタンいろいろ使えま酢」として誕生いたしました。開発のヒントとなったのは、既存の調味酢の使われ方でした。当時、お酢の中でもすし酢などの調味酢の売れ行きが伸びていました。その要因を調べた結果、ドレッシングや酢のものなど、本来の酢飯を作る用途以外にも幅広くアレンジをして活用されていることがわかりました。現在の「カンタン酢」のような汎用性の高い使い方が、一部のお客様に根付いていたのです。ミツカンからアレンジした使い方を大々的に宣伝していたわけではなかったため、このような事実を知ったときは驚きました。そして同時に「様々なメニューに使える調味酢」にチャンスがあると確信しました。多くのお客様に調味酢を使って簡単に失敗なく、美味しいお酢料理を作っていただきたいという想いから、開発に向けて動き出しました。


商品開発時のこだわり

「お酢をもっと身近に感じられる、カンタンで使いやすいお酢」というコンセプトを軸に、色々な料理に使えることが伝わるネーミングやパッケージデザインを繰り返し検討した結果、「カンタンいろいろ使えま酢」というストレートな商品名を採用いたしました。また、手軽で使いやすいと感じていただくために、従来のお酢は瓶容器が主流だった中で、ペットボトルを選択いたしました。


色々な料理に使える商品を目指し、味のバランスには特にこだわりました。酸味のベースはお酢の中でも比較的マイルドな米酢とりんご酢を使用し、そこに甘味と昆布だしを加え、まろやかな風味になるよう、お酢メーカーならではのノウハウを活用しながら試行錯誤を重ねました。その結果、実は発売当初から現在に至るまで、味の見直しはほとんどしておりません。最初の味づくりの段階で、ストイックにおいしさを追求したからこそ、お客様に愛され続けているのだと感じております。


「カンタン酢」のサクセスストーリー

広告投資を開始

発売当初は広告投資もなく、ミツカンの中で目立った商品ではありませんでしたが、売上はゆっくりと伸びつづけていました。当時から高まっていた料理の時短・簡便ニーズに、「カンタンいろいろ使えま酢」が応えていたことが理由と思います。確かなリピーターが存在していることを実感し、もっと売れる商品であることを確信しました。そして、「カンタンいろいろ使えま酢」の魅力をもっと多くの人に知ってもらうべく、2012年に大きな勝負に出ました。それまで、穀物酢や米酢といったお酢にかけていた広告投資を「カンタンいろいろ使えま酢」にシフトしたのです。最初のTVCMは「カンタンいろいろ使えま酢」という商品名と、「これ一本だけで、メインのおかずになる色々なお酢メニューを作ることができる」ことをお客様に伝えるために、「チキンの甘酢照り焼き」のレシピ紹介を行いました。TVCMによってこの年の売上は前年比184%を達成しました(出荷金額ベース)。

新メニュー「フレッシュピクルス」の訴求

翌年の2013年には新メニューの「フレッシュピクルス」をTVCMで提案したところ、さらなる売上を記録し、前年比235%を達成(出荷金額ベース)。「フレッシュピクルス」は、切った野菜をジッパー付き保存袋で「カンタンいろいろ使えま酢」に30分漬けておくだけで完成する、調理時間がかからない簡便なレシピです。野菜と「カンタンいろいろ使えま酢」とジッパー付き容器さえあれば簡単にピクルスを作れることを訴求した結果、ピクルスを家庭で作るのは難しいというイメージを払拭でき、作ってみようという気持ちを醸成できたのだと思います。

現在でもピクルスを作るために「カンタン酢」を購入されるお客様は多く、「カンタン酢」の象徴的なメニューとして今でも根強い人気があるメニューです。当社でお客様にインタビューをしたところ、「カンタン酢で初めてピクルスを作った」という方が多くいらっしゃることが分かり、家庭においてピクルスを作るという新しい価値を提案できたのではと考えています。

「カンタン酢」ブランドの誕生

2014年にはさらなる成長を目指し、大幅なリニューアルを実施いたしました。より多くのお客様に商品名を覚えてもらい、親しみを持っていただくため、「カンタンいろいろ使えま酢」から、「カンタン酢」に商品名を変更し、パッケージも商品名が目に入りやすいようにリニューアルいたしました。

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TVCMでは「フレッシュピクルス」の提案に加え、色々な料理に使えることを伝えたいと考え、様々なレシピの紹介を行いました。結果、発売当初の2008年度に約2500ケースだったものが、2014年度には69万ケース以上にまで拡大いたしました。現在、ミツカン公式HPでは「カンタン酢」を使ったレシピを200件以上公開しており、漬ける・かける・和える・焼く・煮るなど様々な調理方法で「カンタン酢」の楽しみ方を提案しつづけております。


お客様からいただいた声

「カンタン酢」は以前から日常的に合わせ酢を作っていた60代以上の女性に最も購入いただいております。合わせ酢を作る手間がなく、1本で味が決まる名前の通り「カンタン」であるところがご好評いただいており、さらにメインのおかずになる甘酢照焼きや、彩りの良い一品ができるピクルスを提案したことで、合わせ酢を作った経験が少ない30代以下のお客様からも支持をいただきつつあります。特にピクルスは小さなお子様をもつお客様から「野菜嫌いな子どもがカンタン酢でピクルスを作ったら野菜を食べてくれた」といったお声をたくさんいただいており、とても嬉しく思っています。「カンタン」に時間と手間をかけずに調理できる喜びと、家族がおいしいと喜んで食べてくれる嬉しさを「カンタン酢」を使用することで感じていただけたら嬉しいです。


今後のブランド展開について

おかげさまで、「カンタン酢 500ml」の出荷数は2020年に累計1億本を突破いたしました。これからも、簡単・便利で、家族が笑顔になるおいしさがあり、健康にも気づかったヘルシーな提案をしつづけることで、より多くのお客様に愛される商品に育てていきたいです。

さらに、これからは「カンタン酢」ファンの方との交流もしていきたいと考えており、2020年からは、カンタン酢の公式Twitter・Instagramアカウントを開設いたしました。カンタン酢のレシピをお客様が紹介してくださったり、「カンタン酢」のキャラクターである「カンタン酢くん」のつぶやきにフォロワーの方が好意的に反応してくださったり、SNS上でもお客様とのつながりを実感できるのが嬉しいです。

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まだまだ「カンタン酢」という商品を知らない方や、ピクルス等の漬けるメニュー以外の調理法を試していないお客様もたくさんいるので、「カンタン酢」で作ることができるメニューの幅の広さを知っていただき、多くのお客様の生活の中になくてはならない調味料に成長させていきたいです。