商品開発ストーリー

商品化に待ち受けた3つの苦労。
開発者が語る「たまご醤油たれ」誕生の裏側とは

tamago-01-main.jpg

株式会社Mizkan(以下ミツカン)は企業理念である「買う身になって まごころこめて よい品を」に基づき、商品やメニューを通じて、お客様へ「おいしさと健康」を提供していきたいと考え、調味料を中心にお酢ドリンクや納豆など様々な商品を発売しております。

1997年にお酢の醸造で培った菌の育種や発酵技術が生かせる分野だと考え、納豆事業へ本格的に参入いたしました。翌年の1998年には、新ブランドとなる「金のつぶ® 」シリーズを発売。「金のつぶ」は「納豆に新しい価値を生み出す」ことをコンセプトとし、納豆をたれの味で選ぶ楽しみの創造や使いにくい容器を改良するなど、納豆の当たり前を打ち破るような開発を行ってきました。今回お話をするのは2019年にミツカンの納豆の中で販売数1位となった(ミツカン調べ)「金のつぶ たれたっぷり!たまご醤油たれ」(以下たまご醤油たれ)です。この商品は2006年に発売し、今の商品になるまで2回のリニューアルを経て、現在3代目となります。発売から13年をかけ、当社No.1になるまで成長した「たまご醤油たれ」の開発の裏側を、現商品開発担当者が語ります。

津野友也 株式会社Mizkan 商品企画部

玉井千春 株式会社Mizkan 開発技術部

津野は商品企画歴6年目。つゆや新規開発案件など多々商品開発に携わってきた。
玉井は納豆の商品開発に携わって10年。ミツカンの多くの納豆商品の味づくりをしてきた。

序章

生活者の健康ニーズに支えられ、この5年間(2015-2019年)で年平均成長率101.6%と成長が続いている納豆市場。「金のつぶ」ブランドは過去より、納豆の気になるにおいを抑えた「金のつぶ におわなっとう」や、納豆業界初となるたれ一体型容器を採用した「金のつぶ  パキッ!とたれTM とろっ豆TM」(以下とろっ豆)など、納豆市場に新しい価値を提供してまいりました。その中でも「たまご醤油たれ」は、「納豆をたれで選ぶ」という今までなかった価値を作り上げたミツカンの納豆カテゴリーの柱商品です。しかし「たまご醤油たれ」は発売当初から順風満帆ではなく、様々な課題が待ち受けておりました。


「たまご醤油たれ」の誕生

1998年に「金のつぶ」ブランドを立ち上げた当初、納豆はいわゆるしょうゆやだしがベースのたれが主流でした。ブランドを立ち上げたばかりの中、主力になる商品を開発したいと思い、新規納豆の開発に取り組みました。開発時は社内でコンペ形式を取り、様々な納豆の企画が提案されました。その企画会議の中で出てきた商品が「たまご醤油たれ」でした。 

tamago-01-1.jpg

たまごは納豆のトッピングとして不動の人気があり、日本人におなじみの卵かけご飯を組み合わせたら、多くの人に食べてもらえるのではないかと考え、開発に乗り出すことになりました。しかし実際に商品化するには様々な困難が待ち受けており、初代「金のつぶ とろ~りたまご醤油たれ」を発売するまでにも苦労が絶えませんでした。


初代発売に至るまでの3つの課題

1.味づくり

当初、目指すのは「たまごかけご飯のような風味や食感」であるとし、まずはたまごかけご飯の風味を研究することから始めました。当時の開発担当者は毎晩たまごかけご飯を食べ、体に覚えさせ、開発に活かしました。卵かけご飯の美味しさは、「しょうゆ感がたっていて、たまごのまろやかなコクがある」ということを発見し、商品化に落とし込んでいきました。

2.たれの設計

たまごを生の状態のままで商品に使用することは出来ない、しかし普通に加熱殺菌したらたまごが固まってしまうため、試行錯誤の末、固まらない絶妙な加熱条件を見つけることができました。また、たれを小さな袋に充填する際のシール条件(袋に充填した後に袋を閉じる工程)にも非常に苦労し、何度もテストを繰り返し、安定した生産ができる条件を見つけ出すことができました。

3.アレルギー

たまごは「卵アレルゲン」が含まれるため取り扱いに注意が必要な素材です。当時、ミツカンでは納豆たれに卵を使うことが初めてだったため、生産時に他商品へ「卵アレルゲン」の混入が起きないよう、工場とのやり取りをとても丁寧に行いました。原料の区分け管理の徹底、製造ラインや使用器具の洗浄の徹底を行い、生産をしております。


リニューアルを繰り返し、現在の味にたどり着いた

2006年に初代「たまご醤油たれ」を発売した当初は納豆業界でも目新しい商品となり、最初はヒットしたものの、「たまごの風味がしない」「塩味が強い」などのご指摘を受け、その後の実績は伸び悩みました。その後2011年に2代目となる「金のつぶ たま~ごたれ」を発売しました。この商品は初代の「たまごの風味がしない」というご意見からたれを2種類(濃厚なたまごのたれとだし醤油のたれ)入れ、よりたまごの風味を味わえる納豆へと改良しました。また、当時は二人世帯の増加を背景に3個入から2個入に変更をしました。しかし、この商品もなかなか売り伸ばしに悩むこととなりました。転機が訪れたのは3代目へリニューアルさせようと検討している時でした。この商品の初期のコンセプトであった「たまごかけご飯の様な風味と食感」に立ち戻ろうと考え検討した結果、たれの味だけでなく量を変え、納豆のたれは通常5~6g程度のものが多い中、たっぷり10gに増量しました。本来のたまごかけご飯に近づけるためには、風味だけでなく、たれの質や量を工夫し、食べたときにお茶碗からかきこめるような食感にこだわることにしました。このリニューアルをした2012年から現在まで「たまご醤油たれ」は今までの不調から打って変わって急成長をすることになり、2020年には年間売上で3億食を突破することができ、長年ミツカン納豆カテゴリーNo.1だった「とろっ豆」を抜き、No.1へと成長しました。

tamago-01-2.jpg
パッケージの変遷

「たまご醤油たれ」が支持されてきた理由

お客様の声を聞いてみると、「たまごを用意しなくてもたまごを入れたような味がすること」「たれが多いので、まるでたまごかけご飯のような食感が楽しめること」が評価されており、3代目にして狙い通りの商品に磨き上げることができたと感じています。一番うれしかったのは「たまご醤油たれのおかけで納豆を克服できた」というお声を頂戴したことでした。また、通常納豆は60代以上の方の購買率が高い傾向にありますが、「たまご醤油たれ」は購買層を年代別で見てみると、40代の女性に多く購入していただいています。理由としてはファミリー世帯が多く、ご自身だけでなく、お子様も含めた家族皆でおいしく召し上がっていただける納豆だからではと考えております。また、パッケージにも工夫を凝らしており、白地のパッケージに真ん中にたまごの黄身を模したイメージを配置することで、たれたっぷりなたまご醤油たれを想起してもらいやすく、店頭でも目立つデザインを採用しております。実際に買っていただいたお客様からは「パッケージがカワイイ」というお声もいただいております。


今後の展開について

ミツカンは「金のつぶ」を通し、納豆に新しい価値を提供したいと考え始めて20年以上が経ち、様々な商品をお客様に届けてきました。「たまご醤油たれ」が発売し、拡大したことにより「たれで納豆を選ぶ」ことが徐々に広まり、「たまご醤油たれ」の後継品が続々と発売されてきております。納豆を店頭で買うときにパッケージやたれの味で選ぶことが楽しいとお客様に思ってもらえるよう、商品開発に今後も取り組んでいきたいと考えています。夢は「たまご醤油たれ」がより多くの人に愛され、「納豆市場No.1商品となること」。そのきっかけの一つとして学校給食に採用され、日本の子供に「たまご醤油たれ」のおいしさが届くと良いなと思っています。今後は「たまご醤油たれ」のファンを多く作り、納豆を食べようと思うときに選ばれ続けていく商品に磨き続けていきたいです。

ブランドサイト