はじめまして。小倉ヒラクです。僕は「発酵デザイナー」という肩書で、日本各地の発酵文化を訪ねる仕事をしています。
この連載では、おすしエキスパートのシェフたちと、21世紀のおすし文化のスタンダードを考えていきます。

このシリーズでは、気鋭のシェフたちと一緒に未来のおすしのスタンダードを実作のかたちでリデザインしていきます。
今回ご一緒するのは、長年の友人ですし作家を名乗る岡田大介さん。東京江戸川橋の創作すしレストラン、酢飯屋のオーナーでもあります。
魚だけでなく、酢飯や海藻などにも精通したすしの総合格闘家、岡田さんがリデザインに挑戦したのは、『にぎりずし』。
江戸時代に生まれ、現代のおすしのスタンダードとなった、にぎりずし(江戸前ずし)。酢飯に魚介を載せて食べる「おすし」と聞いて最初にイメージするはずのこのにぎりずし。
江戸時代では、酢で〆たりタレに漬けたりとひと手間かけたネタを使っていましたが、冷蔵技術や輸送が発達した現代では、新鮮なネタをそのまま味わうことも可能になりました。
ファミリー用の回転寿司から、高級寿司懐石まで、日本食を世界に知らしめた素晴らしきにぎりずしの文化。
今回岡田さんにお願いしたのは、(あんまり考えたくないことですが)、もし身近なこのにぎりずしが今まで通り食べられなくなったとしたら?という想定でのリデザイン。
すし作家岡田さんはどのように合わせてリデザインしたのか?


昨今話題になっているお米の価格高騰。突然降って湧いたように見えるこの問題、実は今世紀に入る頃から、お米の生産現場には課題が山積しているのです。
米農家の平均年齢は70歳を越えました。米どころの地方は人口減、就農したい若者はほとんどいません。
そんな状況で、そもそもこれまでのお米の価格では、若い農家が「よっしゃ、いっちょお米つくって稼ぐぞ!」と思えるような状況になるわけがなかったのです。
ようやくお米の価格が上がったものの、時すでに遅し。このまま田んぼを守る人がいなくなり、お米自体が食べられなくなったとしたら…
恐ろしい話ですが、あり得ない話では全くありません。
その可能性を直視したうえで、我々はすしをあきらめるのか?
否!!!
SUSHI ALTERNATIVE、クスクスずし、ここに降臨ッッ!

クスクスとは、モロッコの名物料理。小麦粉を固めてつくったものすごーく細かいパスタの一種と考えてください。
お湯に米粒のようなクスクスを入れ、しばらく蒸らすとまるでご飯のような炊き上がりに。
モロッコでは、ここにスパイスソーセージやトマトソースを合わせてカレーのようにして食べます。
余談ですが、僕はむかし北アフリカ系の人たちが多く住むパリの移民街に住んでいたことがありまして、よくこのクスクスを食べていました。
気に入りすぎて今でもおうちで自分で作ったりもしています。
そんなクスクスを…にぎってすしにする…だと…?
「クスクスをお米に見立てて酢飯にし、そこに定番のネタをのせてみました。いやー、握りにくかった!お米より粘度が低いので、慣れない人はスプーンにのせて食べるのもいいかもしれません。魚の生臭さも感じないし、酢との相性も悪くない。お米なくてもクスクスがあれば、にぎりずしいけちゃいますね!」
すし作家岡田さんも太鼓判です。
すしラボ編集部一同も試食してびっくり。まったくもっておすしです。当然パスタなので通常の酢飯よりもやや固めの仕上がりですが、タコのコリコリ感やサーモンの脂味を引き立てる。
小麦と相性あんまり良くなさそうなマグロも、酢がうまみを引き立てて違和感なく食べられました。
クスクス×酢の組み合わせ、モロッコの人が気づかなかった大発明なのでは?
いつかモロッコでクスクスすしパーティをやってみたいものです。
これにて、最先端のシェフたちとコラボした21世紀のおすしスタンダードのリデザイン、いったんおしまいとなります。
またお会いいたしましょう!











