【1】めくるめく土佐寿司の世界
メジャーなものからニッチなものまで、日本各地に存在する郷土寿司。
個性的なネーミングや形状、そして味わいなどそれぞれの地域を代表する魅力的な食文化として、今も受け継がれているものもあれば、消えつつあるものも少なくありません。
そんな郷土寿司の世界で、圧倒的なバリエーションと数を有する郷土寿司大国が高知県です。その数は30種類を優に超えています。
数が多すぎるため、高知の郷土寿司は「土佐寿司(とさずし)」という総称で表さなければならないような場面も多々あります。
土佐に郷土寿司が多い理由は、四国の中でも独自に発展してきた個性的な食文化を支える土佐湾の恵みと、森林率日本一(約84%)を誇る山からの恵みがかけ合わさって生み出され続けてきたことにあるのでしょう。
そしてさらに祭り、酒と社会が必要としたのは、祝いに欠かせない「すし」。高知全域で、それぞれの地域の特徴が現れた土佐寿司が増えていったのも自然なことのように思えます。
今回はそんな数ある土佐寿司の中から、6地域11種の土佐寿司を取材させていただきました。
高知の最も東に位置する東洋町から、最も西に位置する大月町まで、その距離250kmほど。その間に点在する郷土寿司も訪ねながら、移動距離は3日間で750kmに及んだ土佐寿司取材。 しかし、これはたった一部にしか過ぎないのです。
個性的なネーミングや形状、そして味わいなどそれぞれの地域を代表する魅力的な食文化として、今も受け継がれているものもあれば、消えつつあるものも少なくありません。
そんな郷土寿司の世界で、圧倒的なバリエーションと数を有する郷土寿司大国が高知県です。その数は30種類を優に超えています。
数が多すぎるため、高知の郷土寿司は「土佐寿司(とさずし)」という総称で表さなければならないような場面も多々あります。
土佐に郷土寿司が多い理由は、四国の中でも独自に発展してきた個性的な食文化を支える土佐湾の恵みと、森林率日本一(約84%)を誇る山からの恵みがかけ合わさって生み出され続けてきたことにあるのでしょう。
そしてさらに祭り、酒と社会が必要としたのは、祝いに欠かせない「すし」。高知全域で、それぞれの地域の特徴が現れた土佐寿司が増えていったのも自然なことのように思えます。
高知の最も東に位置する東洋町から、最も西に位置する大月町まで、その距離250kmほど。その間に点在する郷土寿司も訪ねながら、移動距離は3日間で750kmに及んだ土佐寿司取材。 しかし、これはたった一部にしか過ぎないのです。
こけらずし
ここで最初に驚いたのが、すし酢を使わないこと。一般的に酢飯を作る場合、米酢に砂糖、塩を混ぜ溶かしてすし酢を作り、それを炊き立てのごはんに合わせて酢飯を作るわけですが、熱々ごはんにかけたのはなんと砂糖!そして塩!お米の熱でそれらを混ぜ溶かすというやり方です。これには取材関係者一同驚きを隠せませんでした。
しかし、教えてくださったお母さん方は皆、いつも通りといった表情。
さて、酢はどうするのかというと、多くの土佐寿司の特徴の一つである「ゆのす(柚子果汁)」を米酢の代わりにたっぷり使用します。
これを比較するという試みを、作り手の皆様にご協力いただきながら記録していくというものです。
今回の記事に11種の土佐寿司の詳細を全て書くと、薄っぺらい内容になるか、膨大過ぎるページになってしまいますので、ここでは、それぞれさわりの部分だけご紹介させていただき、別途それぞれの土佐寿司を後日しっかりご紹介させていただくという形をとらせていただきます。
金時豆の押し寿司・
金時豆入り五目寿司
とにかく元気で明るいこの地区のリーダーの皆様が集まり作ってくださったこのすしの特徴は、なんといっても上品な甘さに炊き上げられた金時豆をたっぷり使用するところ。
材料は同じで、形状の異なる2つのすしをあっという間に作ってくださいました。
それぞれのあじわいの違いについても全て、次回以降の記事でご紹介させていただきます。
ぶりのヘダずし
作り手さんのスケジュールが最優先ですので、東から西へ徐々に効率よく取材して回ろうという希望は叶わず、運転を交代しながら無事に到着。
港から海を覗き込むとコバルトブルーが美しいルリスズメダイがたくさん泳いでいて、まるで南国。水温の高さと海の綺麗さを感じます。
三枚おろしまで終わると、胴体部分はある形に切り分けられ、頭やカマは焼いていきます。
ぶりの仕込みにも、酢飯の仕込みにも、ゆのすとミツカン酢が入り乱れる仕込み風景は、取材が来るからミツカンにしているわけではなく、いつも使用していますよ!と作り手のお母さん。
この「ぶりのヘダずし」を継承する人はいない。私たちで終わり!とあっけらかんと言われてしまい、悲しい気持ちと同時に、ここでしっかりと作り方を記録しておかねばというプレッシャーも相まって、複雑な感情になりながらもバッチリと教わってきました。
もう大丈夫です、絶対に再現できます。僕はすし職人ですから。
きびなごのほおかぶり・
うるめのろくやた
きびなご漁師であり、このすしの作り手でもある青年が一人、お母様から受け継いだレシピを完全再現してくださいました。
この日に合わせてキビナゴを獲ってきてくださり、まだ透明感のあるプリプリのきびなごを捌くところからスタート。
そして、すしを作るのに最初に登場するのが中華鍋! 酢飯の代わりに酸っぱく味付けしたおからを使うのがこのすしの最大のポイントです。
丁寧な下拵えを全て済ませ、一つ一つ手まり寿司の形に丸めていくきびなごのほおかぶりとウルメイワシとおからを使って作る、うるめのろくやた。
そして新たな味もこの日生まれました。
銀ブロウ寿司
今回の取材の中で、最も平均年齢の高い作り手のお母様方。自ら年齢を教えてくださったのは、すしが作り終わった後のことでした。
調理室に入ってご挨拶をすると、すでに良い香りが漂っています。酢飯に混ぜ合わせる根菜類の煮炊きがされていました。
これまでの作り手さんとは違い、ピリっとした空気が流れています。時には厳しい言葉でお仲間さん同士注意しあっています。
それもそのはず、以前までは十数名で作っていたこのすしも、今ではたった3人で作っているとのこと。
間違いのないように、私たちにこのすしの作り方の全てを丁寧に集中して見せてくださっていたのです。
しかも今回は、普段では作らないすし酢バージョンも同時に作るということで、表情も言葉も真剣だったわけです。
今がチャンスとばかりに、僕は一気に怒涛のすしコミュニケーションを図ることに成功。
そして試食の頃には笑顔たっぷりでプライベートなことまで心を開いてお話してくださいました。
刺激と感動が入り混じる大先輩方からのメッセージに心までも満たされる時間となりました。
土佐田舎寿司・鯖の姿寿司・
ナイラゲの押し寿司・昆布のお寿司
なんとここでは、土佐田舎寿司・鯖の姿寿司・ナイラゲの押し寿司・昆布のお寿司という4種類のおすしを教えていただけるというのです。
しかも厳密には、田舎寿司には5,6種類のすしが含まれていますし、昆布のお寿司も白昆布、黒昆布の2種類ありますし、下拵えから見せてくださるので一体何時間かかるのだろう。
そんな心配を吹き飛ばしてくださるほどの、土佐寿司の達人が目にも止まらぬ速さでそれぞれを同時に仕込んでいくではないですか!
郷土寿司大国という言葉は決して過言ではない土佐寿司の世界。
今回の6地域を巡り、作り手の皆様が教え伝えられる全てを惜しげもなく実践して見せてくださったことに共通して感じたことがあります。
それは、「土佐の料理伝承人」に選ばれし皆様の土佐寿司への愛情と情熱が溢れ続けているだけでなく、
次世代に繋ぐべき食文化継承の意地のようなものが心の奥で美しく燃えているということです。
これからの食文化の継承は、先輩方が教えてくれるのを待つのではなく、教わりに伺うことが次世代が担う役割だと思うのです。
次回、それぞれの土佐寿司をより詳しくお伝えさせていただきます。







