野菜の下処理・秋冬編 4選
ごぼう
①洗い方 → 皮の下に味があるので、洗いすぎない
ごぼうは、なるべく泥付きのほうが、乾燥せず、旨味もキープされます。秋冬に出回るごぼうは長根種のため、店頭ではさっと洗って切られていることが多く、切られている場合には、見た目より重い、切り口が空洞でないもの、ひびがないものを選びます。中心よりも皮に近い部分に香りとうまみが多く、それがごぼうの味わいの特徴ですが、それが、ごぼうを黒く変色させるあく成分(ポリフェノール)でもあるので、洗いすぎ、皮のむきすぎは禁物です。
まずは、指先でよく洗い、できればたわし、または歯ブラシなど使います。泥をしっかり落としたら、ひげ根や黒ずみの気になるところを優しく落とします。道具がなければ、計量スプーンや小さめのスプーンが便利です。スプーンの先を下向きにしてごぼうにあて、優しくこするようにします。また代わりに、20cmほど引き出したアルミホイルをゴルフボール大に丸めて角を作り、こすり落としても。とにかく優しくこする感じです。落とした皮のカスはさっと洗います。
②水にさらす → 浸けすぎは香りとうまみを逃すので、さらし過ぎない
ここでしっかりペーパータオルなどでふき取ってから切り始めます。ごぼうは煮物、きんぴら、豚汁、サラダなどいろいろな調理に使いますが、あく(旨味・香り)の成分は水に溶けるので料理の仕上がり、ごぼうの旨味の生かし方によってさらす、さらさないを考えます。さらす場合は、水の量が多すぎないほうがよく、ごぼうが浸るくらいの1/2本につき2~3カップ程度が目安です。
きんぴら(細切り、千切り)
ごぼうが主材料なので、ごぼうの旨味が味の決め手になります。調味には醤油を使って仕上がりの色が黒くなるので、さらさなくでも大丈夫。さっと水をくぐらせるだけでもOKですが、もしさらす場合には、2分程度にしましょう。長くつけすぎると、香りやうまみが流れてしまうだけでなく、またごぼうにあくや色が戻ってしまうことがあります。短い時間でも、さらした水が黒ずみ、香りが移るので、それがわかります。
煮物(斜め切り・ぶつ切りにして縦四つ割り)
筑前煮や牛ごぼうなど、他の素材が加わる場合には、他の素材に色が移ったり、煮汁を濁らせてしまうので、水にさらします。こちらも3分程度で十分です。
サラダ、鍋物
サラダや鍋物では、ごぼうはささがきや千切りが多く、ごぼうのシャキシャキとした食感や優しい香りが欲しいので、水にさらします。細く、細かく切る分、あくが流れ出やすくなるので、3分で十分ですが、より白っぽく仕上げたい場合は水を捨てて、もう一度3分程度さらします。
③切り方 → 切りやすく味なじみがよい斜め切りからスタート
ごぼうは繊維がしっかりしていて、味がなじみにくく固いので、切り方が味わい作りを左右します。なるべく表面積を増やして切るようにすると、火通りもよく、味なじみもよくなり、香りも出ます。
斜め切り~細切り
ごぼうに対して、包丁を30~45度程度にあて、繊維を斜めに切るようにします。切り口が増えて薄い部分もできる、噛みやすい切り方です。ごぼうの存在感も出て、他の野菜や薄切り肉、挽肉などに絡みやすくなります。角度を小さくすると長くなるので、切る厚みを薄くし、並べて千切りにすると切りやすく、きんぴらやごぼうサラダ、汁物などにも汎用できます。
乱切り
ごぼうの切り口に対して常に、包丁を30~45度程度にあてて、転がしながら切っていきます。繊維を断ち切る面を作り、表面積が増える切り方で、長めに煮る煮物や汁物に向きます。噛みやすく、柔らかくしたい場合は角度を小さくしてフォルムが長くなるように切ります。
ぶつ切り~四つ割り
ごぼうの形や食感、存在感を生かす切り方ですが、火通りが悪く、なかなか柔らかくならないので、じっくり煮込んで味を含ませる煮物などに向いています。
ささがき
ごぼうの繊維を斜めに断ち切り、薄くして表面積を増やす切り方です。上手に切るには慣れが必要ですが、コツとしては、まず鉛筆を削るように、包丁を斜めにして回しながら薄切りにして、先を尖らせるように作ってしまいます。左手で手前から奥にごぼうの先を下げるように持って、包丁を沿わせながら先に向かってゆっくり削っていくと切りやすくなります。また、予め、全体に縦に数か所切り込みを入れておくと形が均一にできるようです。ピーラーを使う場合は、まな板に載せて左手で抑え、転がしながら削っていきます。
たたきごぼう
ごぼうの形や食感、存在感を生かし、表面積を増やす切り方です。ごぼうに調理用の木ベラを当て、上から何か所か押してひびを作ります。5cm程度に切ってからひびに沿って手で均一に割ります。お正月料理のたたきごぼうの切り方で、ごぼうらしい形も残り、味が入りやすく、噛みやすい切り方です。
れんこん
①洗い方・皮のむき方 → 節よって特徴が違うことを知って
れんこんは3~4の節で収穫されて出回り、それが店舗でカットされています。節ごとか、割って売られていることがほとんどで、もともと泥水の中で育成されていたので、店頭では乾燥気味の状態にあります。節によって違いが大きさも異なり、向く料理や状態が違います。切り口が細く、節が短くてみずみずしく白っぽいのは、水面の方の若い節で、切り口が黄色や褐色で密度が濃く、長めなのが土に近い部分にあった成熟節です。
れんこんはポリフェノール(タンニン)が多く、一緒に含む酵素によって、また、それが空気と結びついて酸化することで、褐色や黒ずみを生みます。色良く仕上げたい場合は、若い節で切り口が白っぽく、みずみずしいものを選びます。成熟節のほうがタンニンも多く、火の通りが悪いようですが、いずれも、まず切り口が乾燥していない、穴に黒ずみや泥がないもの、皮に割れや傷がないもの選びます。
れんこんの泥付きは珍しく、よく洗って店頭に並んでいるものがほとんどなの
で、洗うのは難しくありません。若い節のれんこんの皮は薄くなめらかなので、こそげる必要はなく、手やたわしで、繊維に沿うように縦に洗います。若い節や直径が細い節は、皮ごと料理に使っても。きんぴらなどには、程よい食感がアクセントになります。
成熟節は比較的皮が厚く、汚れや黒ずみが多かったり、穴に泥や汚れがある場合があり、その際はしっかり汚れを落とします。箸などにペーパータオルを巻いて穴に差し込み、ひねるようにして除きます。
れんこんは根野菜なので繊維に沿ってむきやすく、ピーラーを使うのがおすすめですが、成熟節はむっちりしてむきづらいのでピーラーで大まかに縦にむいて、細かい残りの部分は包丁やピーラーでむきとります。飾り切りをしたい、形を整えたい場合には、求める厚みに切ってから、1切れずつ皮をむきます。その際は、繊維が走る方向に向かって直角にむくため、むきづらいので気を付けてください。
②水にさらす → さらす理由はごぼうとは違います
れんこんをさらす理由は、れんこんに含むポリフェノール(タンニン)が酸化して黒ずんでしまうのを避け、またれんこんに含まれるでんぷん質を落として、煮汁が濁ったり、粘って、火通りや味なじみが悪くなるのを避けるためです。ポリフェノールもでんぷんも水に溶けるので、切ったら水にさらす必要があるのです。
ごぼうと異なり、香りよりも食感や色を重視するという違いはありますが、基本はどんな切り方でもさらす時間は3分が目安です。1節につき、2~3カップの水にさらします。特に若い節のれんこんは水っぽく、でんぷんが少なく、比較的ポリフェノールが少ないので3分程度で十分です。このくらいで、白っぽい粉も水に残りますが、より白くしたい場合は、水に酢を小さじ1~2程度加えて、水を酸性にして酵素の活性を押さえます。
成熟節や中程の節は少し厄介で、店頭に置かれた状態や収穫時期によって酸化が進んでいたり、皮に傷がついたことで中まで酸化していたり、鉄の包丁を使
うことでも黒ずみが進みやすくなります。そのため、切っているときには黒ずみがなくても、調理中や下茹でしているときに黒くなることもありますので、白く仕上げたい時には酢水にすることです。さらに白く仕上げたい時には、酢水で下茹でする方法もあります。
③切り方 → 空洞があり崩れやすいので注意
れんこんは中に空洞がいくつかあるので、皮をむいてしまうと、切るときに割れや折れが出てくることも。薄く切りたいときや輪切りにしたいときはゆっくり丁寧に、できればよく切れる包丁を使います。
薄切り
酢れんこんやサラダ、きんぴら・れんこんチップ向けに。薄く切れば切るほど、繊細な仕上がりになります。シャキシャキした食感に仕上げたい場合は、れんこんの繊維を硬化させるため60~70度程度の沸騰させない湯でゆでたり、酢を加えてゆでるとそうした食感になります。直径が大きい場合は縦半分に切ってから薄切りにします。
輪切り~半月~イチョウ
れんこんの成熟節は密度があり、ホクホク・むっちりした煮上がりになるので、煮込みなどには成熟節が向きます。他の野菜と違い、空洞がある分火通りや味なじみがよくなります。
縦半分~乱切り
他の野菜に比べて乱切りがしづらいのですが、縦半分に切ってから、斜めに厚めに切ると乱切りらしくなります。
きのこ
①洗い方 → 洗うのはNG、逆に、ぬらさずに干したい
きのこは旨味・香り、食感を生かしたい素材。しかも水分が多いので、味わいを生かすのに、洗うのは厳禁。マッシュルームを除いて生食には向かず、加熱することが前提です。汚れやほこりさえ取れればよいと考えます。産直で購入するような場合以外、店頭で買えるのは環境を維持しながら生育される菌床栽培なのであまり気しなくて大丈夫です。パックなどに入っている場合は、外気温度の変化で蒸れて水滴が溜まっていることもあり、使う前にはパックを開けて、できればざるなどにあげて30分程度乾かして使うほうがいいくらいです。
えのきやマッシュルームについているのは栽培した菌床で、汚れではありません。切る前や切った後に、指先で取り除きます。シイタケのかさの内側にあるカスなどは、上下を返してトントンたたく程度に。
②切り方 → なるべく包丁を使わず、大きめに割く
しめじ、マイタケ → 包丁は使わない
菌床についていた石附きと呼ばれる固い部分をのぞいたら、なるべく手で大きめに割きます。加熱するとすぐ崩れて水分が抜けて縮むため、なるべく大きめに手で割きます。大きさがある方が水分が出にくく、ジューシー感や香りが残ります。
包丁で切るより、割いた方が表面積が増え、食感も見た目も味わいもよくなります。
しいたけ → 切る前に乾かす
しいたけは冷蔵庫で保存すると意外と水を含んで傷みやすくなるので注意しましょう。うまみが強いきのこなので、軸を上に向けて30分ほど置いて水分を飛ばしてから切ります。石附だけ取って軸をひねり取り、割くなどして一緒に使います。
炒め物などには薄切りですが、5mmくらいは厚みがあったほうが味が残ります。煮物なら手で半分に割くほうが良いでしょう。
エリンギ → とにかく大きめに、厚めに
エリンギはほかのキノコに比べ、保水性が高いので、より大きく厚めに切って保水力を保たせます。輪切りにするとホタテのような食感になり、長さを半分にしてから縦に厚めに切るとアワビやマッシュルームなどの食感になります。
えのき → 袋ごと切り、2~3回に分けて使う
えのきは袋ごと切るときれいに切れます。かさの部分が意外と蒸れやすく、傷みやすくて臭いが出るので、何回かに分けて、笠のほうから使うのも一手。
例えば、
1日目は、先の部分を中心に袋ごと5cm切り落としてそのまま炒め物などに。
2日目は、軸の部分を5cm袋ごと切って。食感が楽しめます。
3日目は、居酒屋風のえのきステーキもよいですが、1cm幅に切って肉だねに混ぜてみても、無駄のない使い方ができます。
なめこ
なめこは洗ったほうが、適度にぬめりが落ち、調理や調味がしやすくなります。パック詰めの場合は、ざっとざるにあけて水を振りかけるだけでも。菌床がついているときは、おおまかに割いて、菌床をキッチンバサミで取り除き、その後さっと洗います。
生マッシュルーム
加熱しなくてもいただけますが、旨味が多く、食感が命なので、洗わずに使います。
薄切りにしても、厚めに切っても、ほのかな香りと甘みがあり、シャキシャキ、サクサクした食感が楽しめます。加熱する場合は、なるべく大きめに、厚めに、が鉄則です。
里芋
①洗い方 → 「洗う」「乾かす」「むく」をセットに、洗うより「乾かす」ことが重要
しっかり洗って乾かせば、むかずに済む料理も…
里芋を洗うのは面倒ですが、ついている泥は鮮度を守るために必要なもの。泥によって適度な湿度と温度、傷みを招く雑菌から守っています。使う時は、洗う、乾かす、むく…という工程を一連と考えます。洗ってすぐに皮をむくと、どんなに丁寧に洗っても切りながら皮や泥が実についてしまい、泥臭くなることもしばしば。また粘りの成分が手をかゆくしてしまいます。そこで、使う時は前の晩に洗う、午前中に洗うなど、タイムラグを持たせます。痒さをもたらすぬめりは水に溶けるため、乾いていればかゆくなる率も減ります。
洗う際には、そのまま水をかけても泥水が増えるだけなので、少し乾いているうちに、手やたわしで泥を落とせるだけ落とします。里芋好きなら、たわしは必携。丸めたアルミホイルでもよいのですが、意外と落ちません。小さめのボウルにかぶるくらいの水を注いで、手を入れてぐるぐると、いわゆるイモ洗いをすると、汚れがざっと落ちて、あとが楽になります。さらに一個ずつたわしで洗います。
皮をむいて、煮物にするなら、皮の模様をある程度残します。揚げる、炒める
で洋風に使うなら、白い地肌が見えるまでこすります。そうすれば皮をむかなくても使えます。
いずれもざるにあげ、3時間程度乾かし、触ってべたつかなくなったらむきます。
②むき方 → まずは上下落として、形をそろえる
大きさも形も違うので、まずはむきやすさを考えてむくようにします。大きい個体は、上下を3ミリ程度落として、握りやすいようにしてから、それを支えに上下に、6方向をむきます。六角形にみえるようなむき方ですね。6回でむけなくてもOK。ある程度同じ方向性でむけていれば、あとの切りそろえが楽です。これをピーラーでむくと意外と怪我をしますので、しっかり乾かしてむきやすくしてから、包丁などを使ってください。
皮をむかなくてもよい
しっかり洗えば、皮をむかずにから揚げにしたり、輪切りにして焼いたり、煮物やグラタンなどにもできます。電子レンジで丸ごと皮をむく方法もありますが、丸ごとむくのは、芋の大小や形に差があって形がそろえにくいため、意外と使う料理が限られてしまいます。