食品4社で調味料・食用油用リサイクルペットボトルの安全性評価

~ミツカン、キッコーマン、キユーピー、日清オイリオが共同研究、成果を論文として公表~

企業 2022年5月10日

株式会社Mizkan(本社:愛知県半田市、代表取締役社長兼CEO:吉永 智征)、キッコーマン株式会社(本社:千葉県野田市、代表取締役社長:中野 祥三郎)、キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:髙宮 満)、日清オイリオグループ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:久野 貴久)は、物理的再生法(メカニカルリサイクル)でリサイクルしたペットボトル(以下、メカニカルリサイクルペットボトル)が液状調味料および食用油の容器として安全に使用できることを評価する研究を、地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所の尾崎麻子主幹研究員の監修のもと、4社合同で実施いたしました。


今回の取り組みは、プラスチック容器の資源循環という社会課題へ対応すべく、調味料・食用油業界におけるリサイクルペットボトル使用の推進を目的としたものです。この研究成果によって、ほぼすべての液状調味料・食用油の容器にメカニカルリサイクルペットボトルを適用することができ、研究に携わった4社にとどまらず、調味料・食用油業界全体での資源の循環促進に寄与すると考えています。本研究成果をまとめた論文*1が2022年4月27日発行の「日本食品化学学会誌29巻1号」に掲載されました。


*1  Safety evaluation of PET bottles regenerated through mechanical recycling for use as liquid-seasoning and edible-oil containers

Jpn. J. Food Chem. Safety, 2022; 29(1): 19-27



■背景

近年、環境への配慮や資源を有効活用するという観点から、プラスチック資源の循環を促進する動きがますます活発化しています。2022年4月にはプラスチック資源循環法(正式名称:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)も施行されました。

ペットボトルの資源循環として飲料業界では、飲料を想定したメカニカルリサイクルペットボトルの安全性評価がすでに論文化されており、商品への使用が拡大しています。

一方、調味料・食用油にも軽くて扱いやすいペットボトルは普及しているものの、中身の性質や製造工程、賞味期間等の条件が飲料のそれらとは異なるため、メカニカルリサイクルペットボトルは広く普及していない状況です。

そこで、4社合同で液状調味料・食用油におけるメカニカルリサイクルペットボトルの安全性の評価を実施することにいたしました。



■目的

プラスチック容器の資源循環という社会課題へ対応すべく、調味料・食用油業界においてリサイクルペットボトルの使用を推進していくため。



■研究成果

メカニカルリサイクルペットボトルは、ほぼすべての液状調味料および食用油の容器として安全に使用できるとの評価にいたりました。



■研究概要

今回の研究は、厚生労働省の「食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針(ガイドライン)」に則り、メカニカルリサイクルペットボトルの安全性を評価した結果をまとめたものです。安全性評価は、以下のように進めました。


① フレーク状に破砕したペットボトルを、意図的に化学物質で汚れた状態にし、実際のリサイクル工程を経た再生ペット樹脂を作製

② この再生ペット樹脂からペットボトルを作製(メカニカルリサイクルペットボトル)

③ メカニカルリサイクルペットボトルに、液状調味料および食用油を模した食品擬似溶媒を充填・保存(※)

④ 賞味期間に相当する期間、保存をした後、食品擬似溶媒中に溶出した化学物質の量を測定


上記評価の結果、メカニカルリサイクルペットボトルから溶出した化学物質の量は、前述の指針(ガイドライン)が示す基準値(推奨溶出限度値 10ppb)を下回ることが確認できました。


※ボトルの仕様、食品擬似溶媒の充填温度や保存期間は、市場に流通している液状調味料、食用油を想定して設定しました。



■4社での共同研究とした理由・メリット

4社はそれぞれ、醤油、食酢・調味酢、味付けぽん酢、ドレッシング類といった液状調味料および食用油の品質や成分に関し、長年、知見を積み重ねてきました。今回、環境への配慮という面からプラスチック容器の資源循環という社会課題への対応を積極的に推進していきたいという思いに互いに共感したため、4社でともに取り組みを行いました。お互いの知見を元に、食酢、味付けぽん酢、醤油やつゆなどの液状調味料、みりん、料理酒などのアルコールを含む調味料、ドレッシングなどの油性の原料を含む調味料、食用油などさまざまな品質のものを想定し、共同で評価方法を設計し、研究を実施いたしました。

その結果、特定の液状調味料、食用油だけではなく、ほぼすべての液状調味料・食用油の容器として、メカニカルリサイクルペットボトルを適用することができ、調味料・食用油業界全体で資源の循環促進の加速に寄与する研究成果となったと考えています。




(参考)ペットボトルのリサイクル方法について

ペットボトルのリサイクル方法には、化学的再生法(ケミカルリサイクル)と物理的再生法(メカニカルリサイクル)とがあります。化学的再生法とは、回収した食品容器を原料物質(モノマー)等にまで化学的に分解し、精製後にペット樹脂に再度重合させる方法です。物理的再生法とは、材質別に分別収集したボトルから、異物などを除去した後、フレーク状に破砕し、温水、アルカリ水、洗浄剤等により洗浄後、減圧下で高温処理し、汚れの除去と物性の回復を行う方法です。

化学的再生法は、汚れの除去能力が高く、一方、物理的再生法は使用するエネルギーが少なく、設備投資や運転コストの点でメリットがあります。日本では、汚れの少ないペットボトルを回収・供給する仕組みが構築され、機能していることから、今回は物理的再生法により製造されたペットボトルを使用することを前提として、安全性の評価を行いました。