ミツカンの研究開発風土を語る
2007年度「農芸化学技術賞」受賞

ミツカングループは、2007年3月24日、「食酢の健康機能とおいしさの解明に基づく新飲用黒酢の開発」で、
日本農芸化学会・農芸化学技術賞を受賞しました。

受賞テーマと受賞ポイント

受賞テーマ

  • 「食酢の健康機能とおいしさの解明に基づく新飲用黒酢の開発」

受賞ポイント

  • 1.食酢の健康機能を科学的に解明し、食酢の機能性の認知度を著しく高めたこと。
  • 2.最新の発酵技術を活用して、飲用酢のクセを軽減し、飲みやすさを飛躍的に向上させた「純玄米黒酢」を開発し、発売2年目にして単品で約24億円の売り上げを達成。現在、黒酢カテゴリーにおいてトップシェアを得ていること。

ミツカングループの技術力創出の核となる「中央研究所」。
現在、同研究所は、「健康機能解明」「おいしさ解明」「微生物育種」「発酵・醸造」の4分野で研究開発を進め、商品づくりを強力に支えている。
とくに1990年代半ばからは、食酢や納豆など発酵食品の機能性を科学的に解析することで、健康機能に優れ、また安全でおいしい食品づくりを推進してきた。
同研究所を統括する加賀孝之は、今回の受賞について、次のように語る。

「食酢分野のトップメーカーとして、食酢をはじめ発酵食品の機能性の科学的な解明は大きな使命であると考え、日々の研究に取り組んでいます。今回、“農芸化学技術賞”を受賞したことは、ミツカンの商品開発へのこだわり、そして真摯な研究姿勢があらためて評価された結果であると、嬉しく受け止めています。
研究開発におけるミツカンの企業姿勢は、単なる健康ブームや流行に惑わされず、地道な研究を積み重ね、食酢をはじめ発酵食品のもつ優れた機能性を解析すること。さらに基礎研究にとどまらず、醸造・発酵などの製造技術や専門ノウハウを駆使して、その成果を商品開発にいかにつなげていくかにあります。食酢や発酵食品の可能性を妥協することなく探求していく。この姿勢を今後も貫いていく考えです。」

まだまだ人類が知り得ぬ発酵食品の特性を分析、価値を再評価し、あらたな商品づくりに結びつける。地道な研究開発の積み重ねが、将来のミツカンの食品開発を力強く後押ししていく。今回の受賞はたまたまそれが表面に表れたに過ぎない。ミツカンの研究風土は、これからも頑なに健康とおいしさと安全を追求していくことに変わりないと言えよう。

※部署名・役職・内容は掲載当時のものです

「農芸化学技術賞」とは
戦前からある団体で、1957年文部省の認可により社団法人化された日本農芸化学会から授与される賞の一つ。この賞は「農芸化学の分野において、注目すべき実用的価値のある、技術的業績をあげた会員(個人)に対して授与」されるもの。第1回(1968年)から現在まで、食品、医薬品、化学工業など幅広い業種から年1~2件が選ばれている。当社は1978年にも受賞し、2回目の受賞となった。今回は元社員を含めミツカンの研究開発担当者4名に授与された。

基礎調味料から機能性食材へ。
消費者の声に応え、その進化を支えたい。

中央研究所
岸 幹也  1996年入社

※部署名・役職・内容は掲載当時のものです

今回の受賞対象となった、食酢の健康機能の解明では、従来通説とされていた機能を検証し、科学的に裏付けることができました。具体的には、カルシウム溶出・吸収促進、疲労回復をサポートする働き、また、高めの血圧や血中総コレステロール値を下げる働きなどの機能を実証しました。

また、健康意識の高まりから人気が高まった黒酢は、従来は飲みやすさの点で課題がありました。「飲みやすさ=おいしさ」を科学的に分析し、品質を向上させようと開発に取り組みました。黒酢のモニター調査で飲みにくさが、「特有の香り」と「酸味の強さ」にあることを確認。香りのクセの原因がジアセチルであることを突き止めました。糖化から熟成に至る全工程を見直し、酢酸発酵後に低温貯蔵する方法を採用するなどの検討を重ね、ジアセチルを画期的に削減。また、酸味の緩和では、糖質・旨味成分、および酢酸以外の有機酸の構成比率を高めるために、玄米の糖化工程で、糖質・旨味を最大限に引き出すクエン酸高生産麹菌を選定するなどさまざまな工夫をこらしました。そして、2003年秋に目標品質を実現しました。

食品メーカーにおける研究開発、中でも私が担当する健康機能の解明は、成果が出るまでに数年かかる場合もあります。試行錯誤の連続で粘り強さが求められる仕事です。発酵食品のもつ特性や効果を科学的に裏付け、その根拠に基づいて、安心できる食品を商品化して市場に送り出す。研究の成果が商品化に結びつき、それが消費者に喜ばれることが、やはり一番のやり甲斐ですね。当社のお客様相談センターには、毎日のように消費者から多くの感謝の言葉が届けられます。お客様の喜びは、私たち研究開発者の励みであり、苦労が報われるときでもあります。一人でも多くの消費者の方々に、健康機能に優れた、安全でおいしい食品を提供していきたいと思っています。食酢は「基礎調味料」から「機能性食材」へと進化しつつある時代であり、今後も市場を大きく変えていけるはず。発酵・醸造技術や微生物研究など我々が関わるテーマは、未知な部分も多く、将来性が高い分野です。古くもあり、また新しくもあるこのテーマに今後も精力的に挑戦していきたいと考えています。

「カルシウム吸収の促進」「疲労回復のサポート」「高めの血中脂質(血中総コレステロール)の低下」については、ヒトでの検証が出来ていないなどの理由から、現在は食酢の健康機能としては訴求しておりません(2017年5月1日追記)