納豆が食後血糖値の上昇を抑制

成人だけでなく、子どもたちにもぜひ知ってもらいたい

納豆の食物繊維のはたらきに注目

成人の約6.4人にひとりが糖尿病患者もしくは糖尿病予備軍とされる現代日本において、血糖値のコントロールは多くの人々の重大な関心事となっています。血糖値が急激に上昇するのは食事の後。ミツカンでは、納豆に食後血糖値の上昇を抑制する効果があり、かつ、納豆のほうが大豆に比べその効果が強い傾向にあるという試験結果を報告しました。
食物繊維に食後血糖値の上昇抑制効果があることはすでに報告されており、その中には大豆の食物繊維も含まれています。しかし、納豆や大豆のかたちで摂取した場合の抑制効果については、これまでに報告例がありませんでした。納豆のもつ食物繊維に血糖値の上昇抑制効果があれば、納豆にも血糖値の上昇抑制効果が期待できるのではないか、納豆が発酵により大豆にない新たな有効成分を生み出しているのであれば大豆以上のはたらきをもつのではないか、そう考えたところから研究は開始されました。

慎重な準備を重ね、摂取試験に到達

研究の目的は、納豆および大豆が健常成人の食後血糖値に及ぼす影響を確認することにあるため、最終的には被験者の協力を得てヒトでの摂取試験を行うことが不可欠です。ヒトでの摂取試験は採血を伴い被験者に負担をかけることから何度も試験を行うことはできません。そのため1年以上もの期間をかけて動物試験を重ね、ヒト試験で正確なデータが取れる条件を見出して、ようやく健常男性のボランティア12名を被験者とする摂取試験に到達しました。

血糖値の変化

試験方法は、(1)米飯食のみ(米飯150g)、(2)納豆食(米飯150g、納豆45g、タレ6g)、(3)大豆食(米飯150g、蒸煮大豆45g、納豆と同じタレ6g)をそれぞれ摂取し、食後血糖値の変化を測定するというもの。看護士の管理のもとで食後120分間の血糖値を経時的に測定した結果、納豆食は米飯食に比べ常に低い値であり、食後60分では有意に血糖値が抑制されていることが確認されました。さらに、納豆食は大豆食と比較しても、その抑制効果が強い傾向にありました。

常にエビデンスに基づいた情報を

納豆には、食後血糖値の抑制効果をもつとされる水溶性食物繊維が、大豆の約1.5倍含まれています。このことが、大豆と納豆を比較した場合の抑制効果の違いを生んでいるのではないか、と研究チームは考えています。また、発酵によって、大豆にはない高い粘性が生まれていることも理由の一つと推測されますが、詳細なメカニズムについては今後の課題といえるでしょう。
納豆が健康によいということは昔から言われていますが、それをデータによる裏付けとともに科学的に実証した例は、ほとんどありません。ミツカンは常に、エビデンス(科学的証拠)のない食品の機能については決して発表しないという姿勢を貫いています。その意味で、今回、納豆がもつ食後血糖値の抑制効果について科学的な根拠を示せたことは、非常に貴重であったといえます。今後この試験結果を、糖尿病でお悩みの方や血糖値を気になさっている方たちのお役に立てることが、研究員たちの新たな目標となっています。

研究開発を振り返って

今回の研究結果については、血糖値を気になさっている成人だけでなく、子どもたちにもぜひ知ってもらいたいですね。ただ漠然と「納豆は体によい」というだけなく、そこにどういった裏付けがあるのかを知っていれば、健康的な食生活を続けるきっかけのひとつとなるのではないでしょうか。また、子供のうちから健康的な食生活を送っていれば、大人になってからも健康的な食生活を送れるのではないでしょうか。そのためにも、お客様には常に、すべて事実に基づいた情報をお伝えしていきたいと思っています。
中央研究所 主席 石川 篤志

※部署名・役職・内容は掲載当時のものです