ワンちゃんにとって「おいしい」の先にあるもの ― 食事に隠れた楽しさの正体

2026.10.05

食事

「ワンちゃんって毎日同じごはんだけど、飽きたりしないのかな?」

ふと、そんな疑問が浮かんだことはありませんか。

すべてのワンちゃんが毎日同じごはんを食べることに飽きてしまうとは限りませんが、食べ物を嗅ぐ、探す、噛むなど、食事の内容だけでなく食べる体験に変化をつけることで、ワンちゃんにとってごはん時間がより楽しいものになる可能性があります。

食べることは、おいしさや栄養補給だけではない

ワンちゃんにとっても、食事はお腹を満たすためだけの時間ではなく、好きなごはんを味わったり、においを嗅いだり、探したりするなど、さまざまな楽しみにつながる時間になり得ます。

食事の楽しみを広げる一つの要素として、ごはんの与え方を工夫することが挙げられます。ごはんを食べるまでのプロセスを変えることで、食べるだけでなく、匂いを嗅ぐ、探す、噛むといった行動を行う機会にもなります。

「どれくらい食べたか」に加えて、「どんな様子で食べていたか」に目を向けてみることも、その子に合った暮らしを知る一つのヒントになります。

食事の「内容」だけでなく、「食べる体験」に変化を

では、どのような工夫がワンちゃんのごはんをよりたのしくできるのでしょうか。

その手段の一つとして、風味や与え方に変化をつけることが考えられます。

食べ物の報酬に対する好みにはワンちゃんによって個体差がありますが、動物行動学や学習心理学の研究では、「同じ報酬」よりも「変化のある報酬」に対して強い関心を示すワンちゃんもいるという結果があります。

スイス・ベルン大学の研究チームが2018年に行った研究では、同じ食べ物をご褒美として与える場合と、種類を変えて与える場合を比較したところ、実験を重ねるにつれて、種類に変化のあるご褒美を選ぶ割合が高まる傾向が報告されました。

こうした研究から、いつもと風味の違うごはんをあげる、与え方を普段と変えるなどの工夫により、「食べる体験」に変化を加えることが、食事への関心を広げる一つの方法と考えられます。

匂いを使った「探して食べる」楽しみを

食事に変化をつける他の手段として、嗅覚を使った「探す」活動を食事に組み込む方法があります。

いつものフードを少し探して食べられるようにすることで、食事の時間に嗅ぐ・探すといった行動を取り入れることができます。

嗅覚を使って探す活動を取り入れることが、ワンちゃんの情動面に好ましい変化をもたらす可能性を示した研究もあります。フードを探す遊びや知育玩具を楽しむワンちゃんもいます。ワンちゃんによってどんな食べ方を好むかには差があるため、まずは簡単な方法から試し、その子が楽しんで取り組んでいるかを見ながら調整しましょう。

「お皿に入れて出す」だけでなく、「鼻を使って見つけ出す」という一工夫を加えることで、いつもの食事にも新しい楽しみ方を取り入れることができます。

※途中で諦める、強く引っかく・噛む、鳴く、落ち着かなくなるなど、「探す」行為がストレスになっている様子があれば、難易度を下げるか通常の方法で与えましょう。

ワンちゃんの「楽しい!」は、飼い主の幸せ

ワンちゃんが目を輝かせてごはんを探し、嬉しそうに頬張る姿を見ると、こちらまで嬉しい気持ちになりますよね。

食事は栄養をとる時間であると同時に、嗅ぐ、探すなど、その子らしい行動の機会にもなり、飼い主さんにとってもこの子への愛情を感じられる大切なひとときです。「今日も、この子のワクワクを引き出せているかな?」そんな風にほんの少し視点を変えてみるだけで、いつもの食卓がもっと愛おしい時間に変わるはずです。

※食べる量が減った、食べ方が変わったなどの変化が続く場合は、「ごはんに飽きた」以外が原因の可能性もあります。その場合は、体調や口の中の不調などがないか、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

参考文献

  • 鹿野正顕『犬にウケる最新知識』(2024)
  • Bremhorst, A., Bütler, S., Würbel, H., & Riemer, S. (2018). Incentive motivation in pet dogs – preference for constant vs varied food rewards. Scientific Reports, 8, 9756.
  • Duranton, C., & Horowitz, A. (2019). Let me sniff! Nosework induces positive judgment bias in pet dogs. Applied Animal Behaviour Science, 211, 61–66.
  • Rothkoff, L., Feng, L., & Byosiere, S.-E. (2024). Domestic pet dogs (Canis lupus familiaris) do not show a preference to contrafreeload, but are willing. Scientific Reports, 14, 1314.
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